ソニーのカセットデッキ・TC-FX7。
ソニー TC-FX7 |
定価は79,800円だったが、落札価格は3,000円。
落札した時から挙動は怪しかった。
現在電源は入ったが、再生や早送り巻き戻しなどテープがうまく回らない。
昭和50年代
当時のソニーは高さ8㎝にこだわっていた。ソニーの高級オーディオブランド、エスプリはスピーカー以外は高さが8センチで統一されていて、子供心にもカッコイイなあと思わせた。エスプリの後期は8センチよりも高いのも発売されたが。
エスプリの中のカセットデッキTC-K88も高さが8センチ。これは他のKシリーズのような正立透視型ではなく、リニアスケーティングでテープ自体は水平に置く。そうしないと8センチは達成できなかったのだろう。
そうした中、普通のカセットデッキのように縦に入れるカセットデッキが登場した。ソニーのカセットデッキは正統派のKシリーズに対して、新興勢力のFXシリーズが台頭していた。FXシリーズはデジックデッキを名乗り、その中の最上位機種TC-FX7が高さ8センチを実現していたのだ。
8センチを実現する為にヘッドを薄くした。ヘッドといえば録音、再生を担う核になる部分。それを薄くしてまで8センチにこだわる。並々ならぬ熱意を感じるが、この時に開発されたヘッドは他の機種に使われた形跡はない。
当時の批評などを見ても音質には問題はなかったようだが、他に使われなかったのは製造コストや耐久性など、何か問題があったのだろうか。
そこまでして高さ8センチを実現したTC-FX7、カタログを見てもそんなにかっこいいとは思えなかった。下位機種のFX6やエスプリK88についている曲の頭出し機能(AMSオートマチックミュージックセンサー)もついていなかった。
が、カタログの写真写りが悪かっただけなのか、電気屋で実物を見るとかっこいい。
FX7の出た後に世のカセットデッキ群にはノイズリダクションブームが訪れた。それまでのドルビーBからドルビーC、dbx、アドレス…。各社様々なノイズリダクションを開発して搭載した。こういう時こそソニーの独自規格が登場する場面なのだろうが、技術がなかったのか、ソニーは独自規格ではなくドルビーCを採用した。
デジックデッキ群はそれぞれFX6→FX6C、FX5→FX5CとそれぞれドルビーCを搭載したマイナーチェンジバージョンが出たが、FX7は後継機が出なかった。売れていれば後継機が出たのだろうか。
FXシリーズはFX7なき後、FX1010という最上位機種が出た。これは定価が10万円を超えたが、高さは8センチではなかった。この機種も以前中古ショップで5,000円で手に入れたが、手放して今はもうない。
高さが8センチのカセットデッキはこの後2機種出たが(FX606RとTC-V7)どちらもK88と同じリニアスケーティング方式。カセットテープは縦ではなく横に置く。
正立透視型の高さ8センチカセットデッキとしてはFX7が唯一無二の存在となった。
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