ソニーのカセットデッキ・TC-FX7その2
ソニーは昭和55年、型番がTC-FX○○のデジックデッキを発売した。
それまでのTC-K○○シリーズは正統的、音質重視、大人向けって感じだが、デジックデッキは先進的、機能的、若者向けって感じ。
クラシックからいきなりポップスに変わったような雰囲気だ。
TC-FX6、59,800円。
TC-FX5、49,800円。
TC-FX4、43,800円。
この3機種は基本的なデザインが一緒で、値段が安くなるに従って機能も減っていく。
各メーカーが一番競う598はTC-FX6、性能とデザインが上手くバランスした製品だと思う。
これらの3機種とは明らかに違う上位機種がTC-FX7、定価79,800円。
パネル高7センチ(高さ8センチ)という、正立透視型としては限界?のカセットデッキだ。
なんたってカセットハーフが約64ミリというのだから、驚異的ではある。
TC-FX5やFX4の操作スイッチはテープの横にあるのに対して、TC-FX7はテープホルダーの前だ。
なのでイジェクトボタンを押すと操作スイッチも一緒に動く。
高さが8センチ(パネル高7センチ)という関係で、ここにしか設定出来なかったのだろう。
一列に並んだ操作スイッチは軽く触れるだけのフェザータッチ。
それまでのKシリーズのボタンはちょっとだけ押すって感覚があったけど、これはホントに触れるだけって感じだ。
テープカウンターは電子表示。
それまでのメカニカルなカウンターではなくなってカッコいい。
実際には時計ではないので、あくまでも時間表示は目安だ。
下位機種のTC-FX6についているAMSはついてない。
AMSはオートマチックミュージックセンサーの略。
テープの頭出しは各社が勝手な名称で呼んでいるが、テープの無録音部分を検知して頭出しをするものだ。
あればあったで便利だが、なくてもそんなに困らない。
ボリューム調整はスライド式。
この頃のデザインは丸っこいボリュームつまみを無くそうとしていたのだが、スライド式だと埃がたまるのが困る。
薄型にしたからか、ヘッドは2ヘッド。
79,800円という価格的に3ヘッドでもおかしくはない。
周波数特性もワウフラッターも798にしてはちと悪い。
先代の798、同じ79,800円のTC-K71の主な仕様は、
ヘッド:消去1、録再1、再生1
SN比:60db(ドルビーOFF、ピークレベル、DUADカセット)
周波数特性:20~20,000Hz(METALLICカセット)
ワウフラッター:0.04%WRMS
ひずみ率:0.8%(DUADカセット)
大きさ:430(幅)x130(高さ)x290(奥行)mm
重さ:約5.6kg
対してTC-FX7の主な仕様は、
ヘッド:消去1、録再1
SN比:59db(ドルビーOFF、ピークレベル、DUADカセット)
周波数特性:20~19,000Hz(METALLICカセット)
ワウフラッター:0.05%WRMS
ひずみ率:0.9%(DUADカセット)
大きさ:430(幅)x80(高さ)x340(奥行)mm
重さ:約6.5kg
という事で、カタログスペックではK71の方がいい。
とはいえ私では聞いて違いはわからないだろう。
当時の雑誌の評価なんかも悪くはなかったから、798なりの音は出したのだろう。
TC-FX6やFX5にはドルビーCを搭載したFX6C、FX5Cが出たのだが、FX7Cは発売されず。
どうしてだ?
入れるスペースがなかったのか?
昭和56年にはTC-FX77が発売されたが定価は798ではなく69,800円。
外観も普通のカセットデッキ。
デザイン最優先のFX7の後継機は出なかったのだ。