【1000文字小説】金木犀
十月の半ばから、帰り道に少し遠回りをするようになった。 学校が終わると、そのままコンビニへ行く。五時から九時までレジに立って、バーコードを読んだり、弁当を温めたりする。忙しい時間が終わると、店内の音が少しずつ減っていく気がする。 九時になって上がると、裏口から外へ出る。 住宅街を抜ける道には古い家が何軒か並んでいて、角を曲がったところに金木犀の木がある。 夜、そこを通ると、いつも匂いがした。 ある日、いつもの場所まで来ると、金木犀の枝が切られていた。 家の前に脚立が置かれ、落ちた枝が束ねられていた。 僕は立ち止まった。 匂いがしなかった。 しばらくして、歩き出した。 次の日も、同じ道を通った。 切られた枝はなくなっていて、家の前は何もなかったようになっていた。 僕は足を止めなかった。 九時を少し過ぎていた。 コンビニを出てから駅まで歩く途中、何度か後ろを振り返った。 誰かがいるわけではなかった。 ただ、いつもの道が、前より少し長く感じられた。 駅の明かりが見えた。 僕はスマートフォンを取り出して時間を確認した。 九時二十三分。 そのままポケットに戻し、歩いた。 リンク