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2019/03/30

【映画の感想】怪獣大戦争

怪獣大戦争(昭和40年公開)



オープニングは怪獣大戦争マーチ。
これを聞くと風雲たけし城を思い出す。
この曲流れてたよねえ。
この映画は、この曲があるだけで名作だ。

木星の13番目の衛星Xへ向かった主人公たち。
そこにはX星人が住んでいた。
まあ、X星だからX星人なのだ。
でもX星って地球人がつけたんだよね。
X星人も自分たちをX星人と呼んでいるが、本当は何なのだ。

X星人はキングギドラの襲撃によって、地上には住めなくなっていた。
前作で追い払ったキングギドラは、こんな所で暴れていたのだ。
迷惑なやつだね。
台風情報も日本を離れると報道しなくなるが、消滅していないと現地では被害をもたらすのだ。

X星人はキングギドラを退治する為に、ゴジラとラドンを貸してくれとお願いしてくる。
ゴジラとラドンがどこにいるのかも、ちゃんと把握している。
X星人は怪獣を貸してくれる見返りに、がんの特効薬をくれるという。
モスラはいらないのかな。
前作でキングギドラを撃退するときも、モスラの糸は結構役にたっていたと思うがな。
もしかして、もういないのか。
もともと二匹いたのが一匹死んでしまった。
もしかして、残りの一匹も?
私はそんな疑問を持つのだが、劇中ではモスラのモの字も出てこない。

X星に運ばれたゴジラとラドンはキングギドラを撃退する。
モスラはいないが、2匹だけでも何とかなるもんだ。
シェーをするゴジラ。
おちゃらけてる。
子供向け映画だと割り切ってるんだろうね。

がんの特効薬のデータの入ったテープを再生すると、そこにはデータではなく、地球を植民地にすると宣言する音声が入っていた。
X星人はあらかじめキングギドラを操り、X星を襲っているように見せかけていたのだ。
キングギドラだけではなく、ゴジラとラドンも操り地球を攻撃する。
何もこんな手の込んだことをしなくても、最初からキングギドラ、ゴジラ、ラドンを操って地球を攻撃すればよかったのではないのか。
地球人はゴジラやラドンの居場所を知らなかったのだから、邪魔されずに見つけて操れるはず。キングギドラさえも操れるんだから、簡単に出来るよね。
X星人はバレずに地球に来ていたんだから、怪獣を操るのもバレずに出来るはずだ。
X星人は電子計算機の指示にしか従わないから、電子計算機が余計な計算をしたのかな。

タイトルは大戦争だが、それほど大戦争でも無い。
地球人がX星人をやっつけるのがメインだ。
怪獣たちはオマケのようだが、それでも最後はゴジラ&ラドンとキングギドラの戦いだ。


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2019/03/29

ソニーのビデオデッキ・ベータマックスSL-HF705

SL-HF705


ハイバンドベータハイファイSL-HF705
198,000円

ソニーは高さ8センチにこだわっていた。
それはエスプリに始まる、多分。
エスプリはソニーが発売していたオーディオの高級ブランドだ。
プリメインアンプのTA-E88やTA-N88、カセットデッキのTC-K88。
これらの機種は高さ8センチの薄型だったのだ。

エスプリではないが、その後も8センチにはこだわっている、多分。
我が家で買ったベータマックスSL-F11も高さが8センチ。
ビデオの高さが8センチというのは、ソニーだけだったんじゃないかな。
他のメーカーはもうちょっと分厚かった。
そのせいか奥行きはあったけどね。

ベータマックスはその後Hi-Fi、ハイバンド化していった。
機能を色々と詰め込んでいくと、それを高さ8センチに収めるのは難しい。
ハイファイ、ハイバンドした後のベータマックスは、F11のような高さ8センチビデオは発売されなかったのだ。
それでも8センチにはこだわりがあると見え、ベータハイファイのプロセッサーを別売にして高さ8センチにした、ベータプラスを出したりした。
これは本体は高さ8センチに収めたが、プロセッサを足さなければハイファイにならないのだ。

そのうちに、ベータの決定版的なベータプロSL-HF900が発売された。
ジョグダイヤルがついていて編集に便利だった。
ハイバンドベータハイファイだが、大分分厚い。
まあ、この機種は薄さを求めず、性能を求めていたのだから厚くても当たり前だ。
ハイバンドベータハイファイで薄型は難しい。
難しいがそれを成し遂げたのが、SL-HF705なのだ。


どうやって成し遂げたかというと、リニアスケーティングメカで、デッキ部がせり出してくる。
エスプリのカセットデッキTC-K88のようなメカにしたのだ。
これがまたカッコいい。
画質、音質はそれぞれハイバンド、Hi-Fiだし、β1をリニューアルしたβ1sも勿論搭載していた。
SL-HF900のようなジョグシャトルリングはついていなかったが、SL-HF900のリモコンは使えたんじゃなかったかな。

このSL-HF705。
20年近く前、ヤフーオークションでジャンク品を2台落札した。
1台を部品取り用にして、1台を使えるようにしてもらう為だ。
何週間か後に、見事復活をしたSL-HF705。
楽しくてオープンとクローズを無闇に繰り返していたな。

しばらく使っていたが、引っ越しのときに知人に譲った。
高さは8センチだが、奥行きはあって結構場所を取ったのだ。
(このページの画像はソニーのカタログと、私の持っていたSL-HF705の写真から)



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ベータ対VHS

ソニーのベータマックスF11

ベータマックスのよかった点

こんなベータマックスはどうだ

2019/03/28

【映画の感想】三大怪獣 地球最大の決戦

三大怪獣 地球最大の決戦(昭和39年公開)



『モスラ対ゴジラ』に続いて昭和39年に公開されたゴジラ映画。
昭和39年は2本のゴジラ映画が公開されたのだ。
ゴジラの初公開は昭和29年、10年目の大盤振る舞いだ。

タイトルの三大怪獣とはゴジラ、モスラ、ラドンの事で、それぞれ主演の映画がある。
その三大怪獣と戦うのはキングギドラ。
三匹と戦うのにちょうどいいように首がみっつある。
一匹でゴジラ、モスラ、ラドンの三匹と戦うのだ。
タイトルは三大怪獣ではなくて、四大怪獣ではダメだったのかな。

冬だというのに最高気温が28度にもなる異常気象。
でもそれは何故なのかは最後までわからなかったし、異常気象のせいでゴジラやラドンが現れたのか?

小美人はテレビ出演の為に日本に来ていた。
テレビ出演!
前作『モスラ対ゴジラ』で二匹生まれたモスラは、一匹が死んでしまったと言う。
ゴジラとの戦いの後遺症だろうか。
生まれてすぐにゴジラと戦ったのだからな、ハードだよ。
それとも食べるものがなくなったか。
デカイから食べ物も大量に食べるのかもしれないが、インファント島は緑が減ったので、モスラには厳しかったのかもしれない。

キャラクターはお馴染みの顔ぶれが揃うが、役柄がみんな前作とは違う。
『モスラ対ゴジラ』の続編っぽいから、そのままの役柄でやっても良かったんじゃないかな。

阿蘇山からはラドンが現れ、海からはゴジラが現れる。
防衛隊は怪獣を攻撃するシーンはないが、攻撃は無駄だと諦めているのだろうか。
オキシジェンデストロイヤーがないとゴジラは倒せないもんね。
国会のシーンはあるぞ。

黒部ダムに落ちた隕石からキングギドラが誕生する。
この登場シーンがカッコいい。
炎がキングギドラになるのだ。
この隕石ってキングギドラのタマゴだったのか。
それともウルトラマンが移動するときに使う赤い玉みたいに、移動用の玉だったのか。
とにかく、キングギドラの登場シーンがカッコいい。
キングギドラは三つある口から光線を出し都市を破壊しまくる。
さすが金星を滅ぼしただけの事はあるな。
伊達にキングは名乗っていないのだ。
だが操られずに自由気ままに暴れるのは今作だけだ。
今作より後は、常に何者かに操られる事になるのだよ。

モスラはキングギドラと戦うようにゴジラとラドンを説得する。
優等生だね、モスラは。
でもイモ虫の言う事なんて聞きたくないよね。
ゴジラから「お前の言いたい事はわかった。でもお前イモ虫じゃん」なんて言われるよ。
それでもモスラが一匹でキングギドラと健気に戦っているのを見て、戦いに参戦するゴジラとラドン。
ラドンに乗って攻撃するモスラがかわいいな。
倒せぬまでも撃退し逃げていくキングギドラ。

最後の人間のドラマシーン。
何故かローマの休日っぽくなっている。


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2019/03/27

【映画の感想】モスラ対ゴジラ

モスラ対ゴジラ(昭和39年公開)


子供の頃、私が思うゴジラは怪獣王で、王であるからには一番強い怪獣だった。
モスラ対ゴジラは昭和39年の公開。
私が生まれる前の年で、映画は見たことがなかったはず。
それが同い年の友達が私に言う。
「ゴジラはモスラに負けたことがあるんだよ」
そんな事はないはずだゴジラが一番なのだと思っていたのだが…。

台風が来た翌日、でっかいタマゴが流れ着く。
なんのタマゴかはわからない。
で、悪役がそれを漁師達から買い取るのだ。
この映画の中では、ゴジラもいるしモスラもいる世界だ。
なんのタマゴかはわかならくても、「こんなでっかいタマゴはきっとゴジラのタマゴに違いない」とか言う人が出てきても、おかしくはないんじゃないのかな。
怪獣のタマゴだったら国が対策をたてるよね。
でもそんな話もなく、タマゴは見世物にされることになった。

今回のゴジラは地中から登場。
海からやってきて上陸のパターンではなかった。
同じパターンばかりだと飽きられるからだろうかね。
名古屋の街を破壊しまくる。
ちょっとズッコケて名古屋城をぶち壊す。
このゴジラを倒すためにはどうするか。
主人公の新聞記者達は、モスラに応援を頼んだのだ。

インファント島は日本ではないが、族長は日本語を喋る。
小美人も日本語を喋るし、インファント島では取得必須の言語なのだろうか。
インファント島民はみな日本人と顔立ちも似ているし、モスラのタマゴは日本に流れ着いたし、日本人の遠い祖先はここから来たのかもしれない。

寿命が尽きようとしていたモスラは、それでも何とかゴジラ退治に乗り出した。
羽をバサバサさせてゴジラの足元をふらつかせる。
かなりの強風だが、それだけでは倒せないだろう。
そもそもハチとかカブトムシなら強そうだが、モスラは蛾だからね。
最後の武器は鱗粉だ。

タマゴから出てきたのは二匹のモスラ。
親モスラに対してかなりデカいタマゴだと思っていたが、一匹ではなく二匹いたからだ。
生まれたばかりで泳いでゴジラを追いかけ、ゴジラに立ち向かう。
一匹はゴジラの尻尾に噛み付いた。
痛がるゴジラ。
糸を吐いてゴジラをグルグル巻にするモスラ達。
ゴジラは身動きが出来なくなり海に没した。
怪獣王がイモ虫ごときに負けてしまうとは、なんたる体たらくだ。

タイトルはゴジラ対モスラではなくモスラ対ゴジラ。
主役はモスラで、ゴジラは悪役で敵役なのだな。


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2019/03/26

【映画の感想】ゴジラの逆襲

ゴジラの逆襲(昭和30年公開)


映画がヒットすれば続編が作られるのは、今も昔も変わらない。
ゴジラの大ヒットにより生まれたのが本作『ゴジラの逆襲』だ。
逆襲とは言っても、初代は死んでしまったので、今回登場するのは2匹目のゴジラになる。

白黒作品のゴジラはこの『ゴジラの逆襲』と前作『ゴジラ』のみ。
次の作品『キングコング対ゴジラ』からは総天然色だ。
白黒には白黒の良さがあって、ゴジラは不気味で怖い感じだ。
怪獣映画だが、ホラー映画の雰囲気もあるぞ。

今回はゴジラだけではなく、もう一匹の怪獣アンギラスが登場する。
いつの間にかゴジラのパシリみたいな感じになったアンギラスだが、今回は堂々と主役のゴジラに挑む役どころ。
戦いはどちらも素早い動きをしている。
昔のキングコングやハリーハウゼンの怪獣のような動きだ。
図体の大きな怪獣が戦っているような重厚感はないが、人間が入っているような動きには見えず、変な生物が動いているような感じがする。
1度目の対戦では勝敗がつかなかった。

大阪に場所を移しての再戦は、なんかいつの間にかアンギラスが負けていた。
ゴジラがあんまり強いって感じもせずに勝利していた。
噛み付いたりする肉食獣的な戦いで、ゴジラが光線を吐くのも最後だけだ。
ちょっとあっけない気がするな。
映画もまだ中盤だったし、最後は怪獣対怪獣ではなく人類対ゴジラにしたかったからなのか。
アンギラスもゴジラ同様水爆で生まれた怪獣だ。
口から火を吐いたりして、もっと強くてもよかったんではないか。

大阪が焼け野原になった翌日、主人公のいる会社では笑いがおきたりして、ゴジラが去った後は復興目指して頑張るぞーって感じになる。
ゴジラが生きている以上はまたやって来るかもしれないんだが、台風のような災害感覚だ。
実際ゴジラはもう大阪には来ないんだが、もうちょっと緊迫感があってもいいんじゃないだろうかね。

後半のゴジラは、北海道近くのどこかの島を歩き回っている。
なんでいきなりこんな場所だよって感じだ。
ここで雪崩を起こして、ゴジラを氷漬けにするという作戦が開始される。
攻撃機が繰り返し繰り返しロケット団を打ち込み雪崩を起こす。
攻撃機は何機も山の斜面にぶつかってしまうが、最後にはゴジラを生き埋めにした。
この辺はクライマックスだけあって迫力がある。

ゴジラを倒せるオキシジェンデストロイヤーがなくなった今作以降、ゴジラはどこかへ行く事はあってもまずは死なない。
ラストで毎回死んでいたら、次作でゴジラはもう一匹いたもう一匹いただとシラケるものね。
これはこれでいいのかもしれない。


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2019/03/25

【映画の感想】ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃

ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃(昭和44年公開)


ゴジラ映画の中でも異色の作品、それが本作『オール怪獣大進撃』だ。
なぜならこの作品、怪獣達は出てくるが、一郎少年の夢の中でしか出てこない。
つまり、劇中の現実世界には怪獣が登場しないゴジラ映画なのだ。

今この映画を改めて見ると、懐かしいなあってしみじみ思う。
一郎は私よりも何歳かは年上だが、作品の中の世界はまんま私が小さい頃の世界なのだ。
一郎が住んでいるアパートの電化製品や小物が、ああ、あったあった、懐かしいなあって感じ。
タイムスリップした感覚だね。

怪獣が登場するがそれはあくまで一郎の夢の中。
夢の中のゴジラは怪獣王らしく強い。
使いまわしばっかりだが、一郎の夢の中だから、一郎が見た映画が夢の中で再現されていると思えば不自然ではない(か?)。

タイトルは『オール怪獣大進撃』だが、オール怪獣っていうほど、すべての怪獣が出ているわけでもない。
出てくる怪獣はタイトルにあるゴジラ、ミニラ、ガバラ、その他にカマキラス、クモンガ、アンギラス、ゴロザウルス、マンダ、エビラ、大ワシ。
なんとなく雑魚感が漂うな。
モスラやラドン、キングギドラなどの主役級の怪獣は出てこないのだ。
こいつらこそ出てきたら、もうちょっとは人気映画になったんではなかろうか。

ゴジラの息子ミニラは弱虫だ。
ミニラっていうくらいだから小さくて、一郎と同じ大きさだ。
本来のミニラはもうちょっと大きいし、言葉も喋るのだがそこは一郎の夢の中。
だから何でもOKだ。
ミニラは戦う時に大きくなったりする。
一気に大きくなって踏み潰せばいいのだが、そこまでは大きくならない。
名前がミニラだから限界があるのか。

現実世界のいじめっ子ガバラと同じ名前の怪獣ガバラが出てくる。
こいつがあんまり魅力がない。
昭和44年はウルトラシリーズは終わり第2次特撮ブーム前だった。
だが怪獣をさんざん見つくした子どもたちにとっては、なんて事のない怪獣だったのではないだろうかね。

これはゴジラ映画の中の一本なので評価は低い(と思う)。
でもゴジラは出てくるけど、ゴジラシリーズではない映画だったらどうだろう。
夢の中のミニラが果敢にガバラに立ち向かったのに励まされ、現実世界でたくましく成長する一郎。
ゴジラ映画としないで、ゴジラが出てくる普通の映画として公開していたら、もうちょっと評価が上がったかも。
いや、やっぱり上がらないかね。


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2019/03/24

【映画の感想】ゴジラ対メガロ

ゴジラ対メガロ(昭和48年公開)



ゴジラ映画の中でもあまり人気のない作品、それが本作『ゴジラ対メガロ』だ。
グーグルで検索しても、こうやって感想を書いている人はかなり少ない。
映画が公開されたのは昭和48年、この頃は特撮番組がテレビでジャンジャン放送されていた。
わざわざ映画館に行かなくても、テレビをつければ怪獣が出現した時代だった。
ゴジラは突出した存在ではなくなり、数ある特撮の中の一つに過ぎなくなったのだ。

ジェットジャガーを最初に何かの雑誌で見たとき、絶対に悪役だと思った。
多分冒険王だったかな。
私じゃなくても、誰もが悪役だと思うんじゃないだろうか。
そのジェットジャガーが、ゴジラと協力して戦うみたいな説明がある。
味方かあ?
正義の味方なのかあ?
そんな素朴な疑問を持たれるジェットジャガー。
今見ても悪役顔だよねえ。

今回の相手はシートピア海底王国。
人類の核実験により平和を脅かされた為、メガロを使って攻撃してきたのだ。
今回の悪者は実は人類なのだ。
人手不足のシートピアはロボットで人手を補おうとしていた。
それで開発していたロボット、ジェットジャガーを狙う。
シートピアは結構科学力がありそうだ。
ジェットジャガーぐらい作れそうだけどな。

そのジェットジャガーは何故か意思を持った。
自分で勝手に動き出したのだ。
それが正義の意思ならば、シートピアに味方するのが本当だよね。

今回ゴジラと戦うのはメガロ。
前回はガイガンが登場し、怪獣のネーミングが○○ラではなくなった。
本作もメガラではなくメガロになった。
メガラだったらガメラと間違うからだろうか。
それだったらそれでいいのかも。
『ゴジラ対メガラ』
おお、ついにガメラと戦うのかと、勘違いして見に行く子供も増えそうだ。

メガロはカブトムシのようなデザイン。
子供の中ではカブトムシは昆虫の王様的な雰囲気がある。
強さの象徴的なところがあるので、怪獣としては強そうだ。
でもそれが何故に海底の王国の守護神なのか。

メガロは角からビームを出せる。
光線技がなかったガイガンとは一味違う。
口からは爆弾も吐き出す。
手はドリルになっている。
ダムを破壊するシーンがあるが、ここだけ結構な迫力だ。

前作で登場したガイガンが再登場、メガロとタッグを組む。
シートピアは、ガイガンを操っていたMハンター宇宙星雲人と友好関係にあるらしい。
連絡してガイガンを派遣してもらったのだ。
どうせならキングギドラも呼べばいいのにね。

ゴジラ&ジェットジャガー対メガロ&ガイガンのタッグマッチ。
前回ゴジラとタッグを組んだアンギラスは、最初の方にちょっと出ただけだ。
今回は、いや今回もか、細かい事は言わず、怪獣同士のプロレスを楽しむ映画なんだろう。
ゴジラのドロップキック(?)がスゴい。
でも楽しめない子供が多かったんだろうな。
もう怪獣は飽きたのだ。
最後は子門真人の歌が流れて終了。


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2019/03/23

【映画の感想】ゴジラ対ガイガン

地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン(昭和47年公開)



冒頭からゴジラが登場する。
ストーリーとは関係のないオープニングでの登場なんだけど、怪獣映画で最初から怪獣が出るとテンションが上がる。
でも今作のゴジラは出来がブサイクだ。
ゴジラタワーが出てくるが、ゴジラよりもこっちのゴジラタワーの方が出来が良い。
着ぐるみは使いまわしだそうで、くたびれているのだ。

ゴジラとアンギラスの会話が、マンガのような吹き出しになっている。
子供向けの映画だから、子供がわかりやすくていいね。
これなら小美人のような通訳もいらない。

タイトル通り、今回は宇宙怪獣ガイガンが登場。
ガイガンはカッコいい。
鳥のくちばしのような口には、横からキバがクワガタの角のように生えている。
手先も足先も角になっていて、頭からも一本生えている。
腹にはチェーンソーがついている。
全身武器の塊だ。
名前もカッコいい。
前作のヘドラ、その前のガバラ、エビラなんかと比べると、名前だけでもカッコいい。
もしガイガンがエビラだとかガバラだとかだったら、こんなにカッコよくはないとアン・シャーリーなら言いそうだ。

こいつがキングギドラと共に飛んできて、一緒に暴れまわる。
キングギドラが口から反重力光線を出して破壊しまくるのに対し、ガイガンは手でビルを叩き壊したりビルを腹のチェーンソーでぶった切ったりと、原始的な方法で破壊している。
ガイガンを撃退しようとミサイルを打ってくる戦闘機を、ジャンプして手で叩き落としている。
一機一機だ。
もっと広範囲を破壊するビームかなんかが欲しかったけどね。
キングギドラのほうが強そうに思えてしまう。
キングギドラは金星を3日で滅ぼしたそうだ。
ガイガンなら地道な手作業だから相当な時間がかかりそうだ。
壊しているうちに、最初に壊されたところなんかはもう復旧されて、いつまでたっても破壊し終わらないかもしれないね。

ガイガンとキングギドラを操っているのは、ゴキブリ型の宇宙人だ。
人間をユニフォームだと言っている。
ガイガンとキングギドラを操れるのなら、ゴジラやアンギラスも操って地球を攻撃すればいいんではないのか。
ガイガンはわからぬが、キングギドラは操られないと活動できないのか?
いつも何者かに操られている。
自分からは何も出来ない、指示待ち怪獣なのだろうか。
宇宙怪獣なので、操られていないと地球には来ないんだろうから仕方がない。

防衛隊はアンギラスが上陸するときは攻撃していた。
敵だと思っているのだ。
なんでだろうね。
可愛そうなアンギラス。
ゴジラに対してはそんな事はない。
ゴジラと一緒ならアンギラスもOKだ。
でもアンギラス、ガイガンとの戦いで流血。
ちょっと残酷な描写だ。
最後はガイガンとキングギドラを追い払い、ゴジラ&アンギラス組が勝利した。
まあ、勝つのは当たり前だけどね。


2019/03/22

こんなiQはどうだ

こんなiQはどうだ


かなり多くの人が関わって発売される自動車。
発売する時には、これは売れるだろうと思って出すのだろう。
それでも思惑通りにはいかず、あんまり売れないまま終わってしまう車もある。

iQ トヨタ

トヨタが発売した小型の自動車。
もう販売を終了したが、まだまだ街中で走っているのを見かける。
本当に小型で、全長は軽自動車よりも短い2.985mmだ。
今売っている軽自動車で、多分これよりも全長の短い軽自動車はないぞ。
iQ同様に今は販売していないスズキのツインが全長2.735mm。
こっちの方が短いが、ツインは純粋に軽自動車だ。

日本では軽自動車があるので、わざわざiQを選ぶ人は少なかったと言われる。
確かに小さい車が欲しいなら軽自動車で十分だ。
軽自動車じゃ嫌だって人を狙ったのかもしれなが、そんな人はそんなに多くなかったのだ。

軽自動車のない諸外国ではどうだったのか。
フルモデルチェンジもせず発売終了だったので、あんまり好評ではなかったのだろうね。
アントンマーチンシグネットと化したiQもあったが、さっぱり売れなかったようだ。
私はiQが好きなのだが、売れなかったのは悲しい。
少しでも売れるように、2代目を作るならこんなのはどうだろう。

・名前を変える

iQっていう名前がイマイチピンとこない。
ミニって車があるが、ミニミニはどうだ。
わかりやすいし覚えやすいと思うがね。

・一人乗りにする

どうせ小さいんだから、小さい空間に工夫して人を乗せるよりは、最初から一人乗りにする。
ミニワンっていう車があるが、ミニミニワンって名前はどうだ。

・合体車

通常は一人で乗る事が多いと思うiQ。
そんなiQでも、年に何度かはもう少し人を乗せたい時もあるだろう。
そんな時のために、合体できるユニットをオプションで準備する。
iQの後ろに取り付けられる車だ。
合体するとミニバンと化し、8人乗りに変身する。

・電気自動車化する

電気自動車のiQもあった。
これからはガソリン車ではなく電気自動車の時代。
iQはもともとガソリン車っぽくない雰囲気だ。
電気自動車にピッタリだと思う。

・海でも安心

iQのインテリアはマンタをモチーフとしていたそうな。
マンタとは海にいる生物だが、なんでマンタをモチーフにしたのかは不明。
マンタをモチーフとしたなら、海に落ちても大丈夫なiQはどうだろう。
オプションで車を覆うカバーを付ける。
車が小さいので、車を覆うのも簡単だ。
これで海の中でも大丈夫。

最後に

iQはレクサスで出せばよかったのにという自動車評論家もいた。
内装も良かったし確かにそうかもしれない。
車名もアルファベット2文字でちょうどいい。
レクサスならiQじゃなくてIQがよかったか。



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2019/03/21

こんなデジタブルはどうだ

こんなデジタブルはどうだ


昭和50年代、ソニーからデジタブルというラジカセが発売された。
ZX-7、ZX-5、ZX-3の3機種だ。
上位機種のZX-7が最初に登場、62,800円だった。
続けてZX-5が追加、39,800円だった。
このZX-5と交代する形でZX-3が登場、39,800円だった。
もっと展開するのかと思ったが、この3機種で終了した。
型番ではZX-9とZX-1が使われずに余っている。
では、こんなデジタブルはどうだろうか。
妄想してみた。

ZX-9

デジタブルの最上級機。
ZX-7が62,800円だったから、その上は79,800円くらいか。
あんまり値段が離れると、シリーズっぽくないからね。
サイズはZX-7と同じにする。
小型軽量がコンセプトの機種なので、大型化は意図に反する。
ZX-7と同サイズで、さらに機能を詰め込むのだ。
ソニーの公式『小型化=高性能化』の見せ所だ。

機能を詰め込むにはどうするか。
AC電源専用にして、空いた乾電池のスペースを活用しよう。
ZX-7はデジタブルを名乗るが、それほどデジタルっぽくない機能も多い。
そこをデジタル化する。
チューナーをシンセサイザーチューナーにしてプリセットも可能にする。
サースリーのように周波数は液晶表示だ。
再生や早送り、巻き戻しボタンはフェザータッチ化。
テープカウンターも電子化。
レベルメーターもつける。
テープの頭出しAMSも搭載。
キチンと曲数を表示出来るようにする。
これらは全部当時の技術で可能だったはず。
取っ手があればいいなあなんて要望が出ないように、重量を重くして30キロぐらいにする。
これなら持ち運ぼうなんて気は起きるまい。

ZX-1

デジタブルシリーズの最廉価機種。
一番下なので値段を安くする。
ZX-3が39,800円だったので、29,800円ぐらいにするか。
安くする為、この機種こそ取っ手はいらない。

偶数を使っていいのなら、まだZX-8、ZX-6、ZX-4、ZX-2が残っている。
二桁以上を使っていいのなら、それこそ無限に出来るな。


他にもある、ZX

・ソニーのウォークマン
・仮面ライダーZX
・川崎のニンジャ
・Nakamichiのカセットデッキ



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2019/03/20

ソニーのステレオラジカセ・デジタブルZX-7

デジタブルZX-7


ソニーのステレオラジカセ、ZX-7は小型のラジカセだ。
定価は62,800円。
コレぐらいの価格のラジカセならば、たいていは大きくそして重くなる。
同じソニーのラジカセであれば、ジルバップにしてもXYZにしてもエナジーにしてもみんなデカくて重かった。
だがこのデジタブルZX-7は違う。
性能を上げ、なおかつ小型化する為に労力を払ったようなラジカセなのだ。

ラジカセなので電池を使う。
ZX-7は単1の電池を4本だ。
結構な場所を取る。
そのスペース以外にメカを詰め込んである。
この価格帯のラジカセに付いていそうなものが無かったりする。
まずは取っ手がない。
まあ無くても小型なので、むんずと掴んで持ち運べるが、重さはそれなりにある。
女性だと持ちにくいだろうし、ちょっとした距離を移動させるには不便だ。
その為にキャリングケースが別売りで用意されている。

再生や早送り巻き戻しなどの基本ボタンがフェザータッチではない。
昔ながらの押し込み式だ。
デジタブルという名称からデジタルっぽい仕様を期待するとあららってなるぞ。
スピーカーはフルレンジ。
大きなスピーカーは付いてない。
どれだけ大きなスピーカーを搭載するかを競っていたラジカセとは一線を画す。
ツィーターとかはなし。
その代わりがソニー自慢のAPMスピーカーだ。
『同サイズのラジオカセットなどと聴き比べてみえれば、そのハイフィデリティサウンドをはっきりと確認できます』とカタログには書かれいてる。
いや、同サイズじゃなくて、同価格の大型のラジカセと比べても遜色なし、それどころかそれ以上だと書いて欲しいね。
このAPMスピーカー、従来のスピーカーとは違い丸くなく四角いのだ。
スピーカーに合わせたのか、ZX-7のデザインは直線基調。
四角四角したデザインだ。

型番は従来のCFS-○○ではなく、ZX-となった。
ZXの型番はZX-7と、本機の後に出たZX-5とZX-3の3機種だけだ。


●周波数範囲:TYPE1ノーマルカセット40~13,000Hz(EIAJ)
       TYPEⅡCrO2カセット40~14,000Hz(EIAJ)
       TYPEⅣMETALLICカセット40~16,000Hz(EIAJ)
●ワウ・フラッター:0.04%(WRMS)、±0.1%W•Peak(EIAJ)
●最大外形寸法:幅354x高さ105x奥行105.5mm(EIAJ)
●重さ:2.6kg(乾電池含む)   ソニーのカタログから引用


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2019/03/18

平成7年に発売されたソニーのステレオラジカセ

平成7年

平成7年は西暦でいうと1995年。
1995年といえば、ウィンドウズ95が発売された年だ。
今からもう24年も前になる。
私もパソコンを買ったなあ。
今はなきゲートウェイ2000のデスクトップだ。

平成7年は小室哲哉率いるグローブがデビューした。
デビュー曲の『Feel Like dance』は100万枚近くを売り上げるヒット。
翌年は小室一色になるのだ。
そんな平成7年に発売されたソニーのステレオラジカセ。



PMC-M2


MDIO エムディオ
98,000円。

ステレオラジカセではない、マイクロコンポ。
今回の機種は、カセットの代わりにMDを搭載した。
それまでのテープ資産もあるし、カセットもつければいいと思うのだが、ついてない。

カタログは

『ラジオカセット/マイクロコンポ総合カタログ』から


『CDラジオカセット/マイクロコンポ/MD-CDマイクロコンポ/ラジオカセット総合カタログ』になった。長いな。

価格は98,000円でかなり高額だが、ラジカセではなくMDコンポと考えたら安い部類だ。
ラジカセのエナジーキューブCFS-F40は99,800円で10万円を超えなかった。
その頃は消費税がなかったが、M2の時代は消費税3%。
税込価格だと10万円を超えている。

型番はM1ではなく何故かM2。
ウォークマンの初代は型番がTSP-L2。
これも何故かL1ではなくL2。
人知れずに消えたM1やL1があったのだろうか。
重さは13.9kgとかなりの重さ。ラジカセではないからこんなものか。

●最大外形寸法 本体:幅180x高さ253x奥行292mm(EIAJ)
●最大外形寸法 スピーカー:幅175x高さ309x奥行250mm(EIAJ)
●重さ:13.9kg



ZS-M3


MDIO エムディオ
72,000円。

エムディオの第2弾。
M2同様エムディオを名乗るが、デザインはM2と違いググッとラジカセっぽくなった。
M2の次だからM3とはわかりやすいが、型番はPMC-ではなくZS-だ。
電池では駆動しないっぽい。

●最大外形寸法 幅520x高さ227x奥行234mm(EIAJ)
●重さ:6.9kg



ZSX-G7000 


ドクターチェンジャー
49,800円

愛称がドクターチェンジャー。
なぜチェンジャーかというと、CD3連装のチェンジャーがついているからだ。
3連装なので、1枚聞き終わったら取り替えて次、という手間が省けるから楽だね。

デザインはパナソニックっぽい感じがする。
ソニーっぽさがないし、ソナホークに3連装チェンジャーをつけただけの方が、良かったんじゃないのかな。
何でこんなデザインにしたんだろうね。
ソナホークはそんなに売れなかったんだろうか。
とはいえドクターチェンジャーもそんなに売れたわけでも無いようで、2機種で展開を終了した。

弟機種のZSX-5000共々電池では駆動しない。

●最大外形寸法:幅640x高さ205x奥行304mm(EIAJ)
●重さ:8.5kg



ZSX-5000


ドクターチェンジャー
44,800円

ZSX-G7000の下位機種。
サイズは一緒だがちょっとしたところでコストダウンが図られている。
主な違いは、カセットがシングル。
CD-Gと光出力がない。
そんなところぐらいか。

●最大外形寸法:幅640x高さ205x奥行304mm(EIAJ)
●重さ:8.5kg


CFD-28、CFD-38


22,000円、23,000円。

CFD-28よりも1,000円だけ高いCFD-38。
大きさも重さも一緒。
違いはCFD-38には、再生オートリバースがついている、色がこっちのほうが若干黒っぽい、そんなところだろうか。
1,000円しか値段の違いがないのならば、CFD-38だけの一機種でいいような気がするね。
でも、1,000でも安い方がいいって客層もいるんだろう。

●最大外形寸法:幅400x高さ173x奥行244mm(EIAJ)
●重さ:4.7kg(乾電池含む)



PMC-303

ティミー
36,000円


デザインはPMC-M2っぽいが、MDは搭載せずカセットなのでエムディオは名乗れず。
マイクロコンポの一員だが、ティミーの愛称がついている。

●最大外形寸法 本体:幅140x高さ222.5x奥行280.5mm(EIAJ)
●最大外形寸法 スピーカー:幅130x高さ222.5x奥行210mm(EIAJ)
●重さ:6.3kg



CFD-17


17,000円。


CFD-8に再生オートリバースとMEGA BASSを搭載した後継機。
大きさ、重さはCFD-8と同じだ。
新機能は重さがないのか、それともコストダウンで何か部品を減らしたのか。

●最大外形寸法:幅500x高さ156x奥行243mm(EIAJ)
●重さ:4.1kg(乾電池含む)



CFD-340


22,000円。

まあ、手軽な安いCDラジカセだ。

●最大外形寸法:幅525x高さ172x奥行241mm(EIAJ)
●重さ:4.5kg(乾電池含む)


CFD-510


本体とスピーカーが分離出来る3ピースタイプのCDラジカセ。

●最大外形寸法 本体:幅588x高さ230x奥行207mm(EIAJ)
●重さ:5.7kg

まとめ

ラジカセのカセットの代わりに、MDを搭載した機種が発売された。
MDはソニーが開発した新世代の記録メディア。
カセットテープに比べると頭出しが素早い。
カセットだと頭出しに時間がかかるがMDは瞬時だ。
CDに慣れた人間にとっては、カセットの頭出しは遅すぎるのだ。

(このページの画像は全てソニーのラジカセのカタログから)


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2019/03/17

平成6年に発売されたソニーのステレオラジカセ

平成6年


平成6年のヒット曲、第1位はMR.CHILDRENの『innocent world』、2位には広瀬香美『ロマンスの神様』、3位が篠原涼子 with t.komuroの『恋しさと せつなさと 心強さと』。
この3位、with t.komuroのt.komuroが小室哲哉だ。trfもヒットして、小室ブームが盛り上がってきた。
そんな平成6年に発売されたソニーのステレオラジカセ。

PMC-501


マイクロコンポ501
55,000円。

新しいステレオラジカセ、ではない。
ソニーはパーソナルコンポーネントシステムと呼んでいる。
ラジカセのカタログに載ってるじゃないかと思えば、カタログはこのマイクロコンポ501発売を契機に、

『ラジオカセット総合カタログ』だったのが、


『マイクロコンポ/ラジオカセット総合カタログ』となった。

この頃展開していたソニーの小型ステレオ、ピクシーの最廉価機種の様相だが、ピクシーは名乗らない。
あんまり低価格なのでラインナップに入れなかったのだろうか。
ピクシーの型番はMHC-○○、こちらはPMC-501だ。こっちの方がなんとなくピクシーっぽい型番だね。

ソニーでは以前AC/DCコンポという名のラジカセがあった。

 過去記事→ソニーのステレオラジカセ・AC/DCコンポ

AC/DCコンポとコンポを名乗ったが、どう見てもラジカセだ。
時間は短いが電池でも駆動出来た。
マイクロコンポ501はラジカセではなくコンポらしく、乾電池は使えずにAC電源専用だ。

価格は55,000円でソナホークと一緒。

●最大外形寸法 本体:幅180x高さ254x奥行285mm(EIAJ)
●最大外形寸法 スピーカー:幅150x高さ254x奥行227mm(EIAJ)
●重さ:12.0kg(乾電池含む)

PMC-301


マイクロコンポ301
45,000円。

マイクロコンポ501の下位機種。
パッと見ただけでは違いがわからない。スピーカーのデザインがちょっと違うくらいか。大きさ、重さはほとんど同じだ。スピーカーの奥行きが301の方が2mm長い。なぜだ。
501にあって301にないものは、CDグラフィックス再生、ビデオ入出力、スピーカーのツィーターぐらい。実用最大出力は501の半分の12.5W+12.5W。
価格差は1万円だが、音楽を聞くだけなら301でも十分だ。

●最大外形寸法 本体:幅180x高さ254x奥行285mm(EIAJ)
●最大外形寸法 スピーカー:幅150x高さ254x奥行229mm(EIAJ)
●重さ:12.0kg

ZS-70



ソナホーク
ソナホークZS-66の後継機種。
ZS-66に光デジタル出力端子がついただけのマイナーチェンジモデル。


●最大外形寸法:幅532.4x高さ226.7x奥行258.2mm(EIAJ)
●重さ:8.4kg(乾電池含む)

ZS-607

ソナホーク

型番が3桁になったが新世代というわけではなく、ZS-70から光端子を省いた廉価版。
ということはZS-66と同じだ。ZS-66とは型番が違うだけで、中身は一緒っぽい。
ソナホークはこれが最後の機種で、この後は新型が出なかった。

●最大外形寸法:幅532.4x高さ226.7x奥行258.2mm(EIAJ)
●重さ:8.4kg(乾電池含む)


CFD-25

23,000円。
簡単操作で安いCDラジカセ。

●最大外形寸法:幅393x高さ162x奥行233mm(EIAJ)
●重さ:4.4kg(乾電池含む)

CFD-G26


29,800円。
CFD-25にCDグラフィックス機能がついたバージョン。ボーカルマイクも付いているのでカラオケも楽しめる。

●最大外形寸法:幅398x高さ160x奥行255mm(EIAJ)
●重さ:4.5kg(乾電池含む)


CFD-8


なんて事のないCDラジカセ。
値段の表記はないが、定価21,500円のCFD-10の後継機っぽいので、実売19,800円ぐらいだったのか。

●最大外形寸法:幅500x高さ156x奥行243mm(EIAJ)
●重さ:4.1kg(乾電池含む)


CFS-W328


14,000円。

ダブルカセットだがこの値段。安くなったものだね。

●最大外形寸法:幅560x高さ157.5x奥行156mm(EIAJ)
●重さ:3.3kg(乾電池含む)


まとめ

平成6年もラジカセの主力はソナホーク。新機種も出たが新世代のソナホークではなく、マイナーチェンジ版だった。ソナホークはこの後、新機種は登場しなかった。
ステレオラジカセではない、マイクロコンポ501が登場し、ソナホークとのツートップになった。

長らく続いたドデカホーンは、残っていた最後の機種CFS-DW45がついにカタログ落ちした。
ドデカホーンの1号機CFS-W60の発売は昭和61年。
ドデカホーンはザッと数えてみると30機種近くもある。
8年も続いた息の長いブランドだったね。

プレッシュはF1が残っているが、コレはカセットがないので、あくまでCDやラジオを聞くためだけの機種だ。ラジカセではなく、ソニーはパーソナルオーディオシステムと呼んでいる。

(このページの画像は全てソニーのラジカセのカタログから)


〈関連ページ〉

平成元年に発売されたソニーのステレオラジカセ

2019/03/15

【1000文字小説】おくりもの

 年の頃十歳前後の少女が一人、静かに眠っていた。その頬はこけ、体は痩せ細り、顔色は透き通るほどに青白かった。
 その少女の姿をそっと見つめている一つの人影があった。いつもはにこやかで優しそうな顔も、今日は悲しさで曇っている。
 眠っている少女は今、夢を見ていた。それはとてもとても楽しく、そして懐かしい夢。あの時から何度も繰り返し見た夢。
 逞しい父親がいて、優しい母親がいて、仲良しの友達がいて、みんながみんな楽しそうな、夢。
 それが突然悲しい夢へと姿を変える。
 お父さんは?
 お母さんは?
 みんなは?
 どこ? どこ? どこ? 
 あたし一人を残して、どこへ行ったの……。
 少女の目からは涙が零れ落ちた。
 それは覚めない夢、永遠の悪夢。
 少女こそこのシェルターとまったくの偶然によって助かった、最後の人類だった。
 少女の父も母も友達も、少女の知る人知らない人すべてが、今はいない。
 少女の死は人類の絶滅と同義である。そしてもはや人類が消え去るのは時間の問題に過ぎなかった。

 彼にはこの悲しい出来事をどうすることも出来なかった。
 彼は少女の元を離れ、シェルターから外へと出た。
 外は見渡す限りの廃虚が続く。
 少女の見ていた恐ろしい、そして悲しい悪夢の続きがここにある。
 かつては人の住んでいた所。
 今は誰も住んでいない所。
 無人の街にはしんしんと雪が降り続いている。止む事のない永遠の雪。その雪は人間には耐え切れない多量の放射能を含んではいたが、今日という日にはいかにもふさわしい。
 彼にはその雪が廃虚を彩る死化粧に見えた。
 彼は思ってもいなかった。
 楽しい筈の今日がこんなことになっていようとは。人類がこれほどまでに愚かだったとは。
 あの子は再び目を覚ますことが出来るだろうか。起きて、靴下の中のおくりものに気がついてくれるだろうか……。

(1998/12/25/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:776)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】私は夢見る

 ぐうぐう。あるいはすやすや。あるいは昏昏。あるいはZZZ。
 兎に角、丑三つ時。草木も眠る位だから私も眠っていたのである。総天然色の夢を見ながら、心地良く、快適な悪夢にうなされながら。
 そんな時、太平の夢を破る電話のベルが鳴り響いたのである。いつまでもだらだらと鳴り止まないベルに、仕方なく私は電話に出た。眠い目をこすりながら、舌打ちして。電話の主に呪詛の言葉を吐きながら。ムニャムニャ。
「……夢を見てたんでしょ」
 電話に出ると女はそう言ったのである。暗く、弱々しく、くぐもった、久方ぶりのハスキーボイス。アリャアリャ。
 夢を必要としない人はいない。夢を見ない人もいない。夢を見たことがない等と言う人間が偶にいるが、これはただ単に自己の記憶力のなさを喧伝しているに過ぎないのである。
 日がな一日、人の心に波風が立つ事がなかったら、眠りの中に夢はない。しかし、私達の心はゆらゆらと嵐の中の小船のように揺れ、風に飛ばされた木の葉のようにふらふらと舞い、迷子のようにうろうろと当所無く彷徨する。であるから、人が夢を見ない筈がないのである。
 不満があり、願望があり、不安があり、恐怖があり、驚きがあり、悲しみがあり、感動があり……、要するに、葛藤が夢を見させているわけなのである。
 生きていれば避けられない葛藤を、脳は健気にも整理整頓してくれる。それが夢なのである。くどいようであるが、覚醒している心に葛藤がなく、秩序があれば夢を見ないのであり、だから人は夢を見るのである。
 秩序がなく、混沌とした、私達の生きている世界。グチャグチャ。
 夢を見ない女。夢を見れない女。
 電話の声はいつのまにか泣き声に変わるのである。そして泣きながら自分の身の不幸を語ったりしちゃうのである。妻子ある男、上司たる男、愛した男、捨てた男。
 それは、どこにでもあるつまらない話なのであった。私にとっては。多分本人にとっても、いつの時代でも、誰にとっても。困ったものなのである。
 で、夢。私は女にとっての夢なのである。自分の気持ちを整理する為の。夢を見ない可哀相な女の為の。
 消えない想い、留まる想念。いつになったら彼女の想いは消え去るのか、全くもって不明なのであった。メチャメチャ。
 それで、もうすでにこの世にいない我が妹からの電話を切ったのである。オヤスミナサイ。以上全て夢の話。これも夢。夢オチ? ウヤムヤ。

(1998/12/18/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:995)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】私は空缶を蹴りながら

 かつてその中にコーヒー。
 今はただリサイクルを待つ空缶を、私は蹴飛ばしながら歩いているのである。森閑とした住宅街を、重いカバンを持ちながら。
 家から家へと歩き回る飛び込み営業の私は、ただ歩き回るのではあまりに面白味がないので一考。家から家へ移動する際、空缶を蹴りながら移動する事を思いついたので実行。
 で、これが中々難しい。あまりに強く蹴りすぎると、当然の事ながら遠くまで飛んでしまい、隣の隣の隣の家の前位にまで行ってしまう。私はまず隣の家へ行きたいのであり、これではいかにも具合が悪い。戻る為にそこからまた強く蹴ると、再び元の位置に戻ってしまい、未来永劫往復運動を繰り返す事になってしまう。また、強く蹴る事によって許容範囲を遥かに超える巨大音が発生、閑静な住宅街で顰蹙を買ってしまう事にもなってしまう。逆に、あまりにも弱すぎると遅々として進まぬ羽目に陥り、件数をこなさなければならない営業としては非常に困る事態が生じるのであり、たかが缶蹴りと侮っていると酷い目にあってしまうのである。
 私は左右の足を巧みに使いドリブル。学校帰りの小学生達に空缶を奪われぬよう、フェイントをかけながら。そして隣の家。
「消防署の方から来たんですけど……」
 玄関のインターホンに向かって話す。出てきたのは見るからに頭が悪そうな若い主婦。しめしめ、と思ってもそれは顔に出さないでポーカーフェイス。売れるまでは。
「消火器を購入したのはいつですか?」
「え? そんな事お、わかんないわあ」
「本当ですか、大変ですよ。消火器というのは使用期限がありますので、それを過ぎると消火活動に重大な支障を来たす事になりますから」
「ええ! そうなんですかあ?」
 私はカバンから小型の消火器を出して主婦に販売、代金一万五百円也を受け取った。消費税込みで、まんまと。しめしめとほくそえむ。顔に出して。ストレートフラッシュ。
 二百軒目。出てきたのは目つきが鋭く熊のような大柄の男。用件を告げると殴り掛かってきた。詐欺め、不法侵入だ、俺は正当防衛だなどと喚きながら。私はほうほうの体で逃げ出した。しかし道路に出てくるりと反転。待機させてあった空缶をその家目掛け、思いっきり力を込めてシュート。後は後ろを見ずに走り出す。全速力で、カランコロンという音を後にして。
 さて本日は店仕舞い。明日はコーラの缶にしよう。晴天を祈りながら帰宅。

(1998/12/11/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:992)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】雨が降った日、雪が積もった朝

 その日は雨の平日という事もあり、デパートの来店客は少なく、屋上を訪れる客もほとんどいなかった。毎日こういう具合だったら楽でいいな、と雅宏は雨が降る度に思うのだった。忙しくても暇でも、時給に変りはないのだから……。
 大学生の雅宏はあるデパートの屋上でアルバイトをしていた。屋上には子供向けの乗り物やゲーム機などが置いてあり、雅宏はそこの管理、掃除や両替や機器の簡単なメンテナンス等、を任せられているのである。
 雨は激しさを増している。天気予報通り、今日一日は降り続けるであろう。気温が低いので、これから雪に変るかもしれない。
 雅宏がふと気がつくと、端の方に五歳位の男の子が、傘をさして立っていた。一人でやって来たのだろうか、周囲には男の子の親らしい人影は見当たらない。
 雅宏は男の子の側に行くと優しい声で尋ねた。元来が子供好きなのである。
「坊や、一人で来たの?」
「ううん、お母さんと」
「そう。お母さんは?」
「わかんない。ここで待ってろって」
 母親が子供を屋上で遊ばせておいて、自分は買い物をしているというケースはよくあるが、こんな雨の日に子供を屋上に置いたままとは、全く呆れてしまう。
 どこから来たのか聞くと、男の子は黙って空を指差した。雅宏はその指につられて顔を空に向けた。そして苦笑してしまった。一瞬、男の子が本当に空の彼方から来たように思えてしまったからだ。
 それから随分経っても母親は現れなかったので、雅宏は迷子の館内放送を頼んだ。しかし男の子の母親は現れなかった。
 早番の雅宏のあがりが近づいてきた頃、
「あ、お母さん」と男の子は嬉しそうに弾んだ声で言った。咄嗟に雅宏は空を見上げた。空からは雨からバトンを受けた雪が降って来ていた。勿論男の子の母親が空からやって来る筈はなく、男の子は屋上の入り口に現れた母親の元へと駆けていった。
 母親は四十歳前後の、やや小太りの女だった。雅宏を見ても何も言わず、無愛想な顔で男の子の手を引いて帰っていった。雅宏は何故か、騙されたという気がしたのだった。
 翌日、雅宏はデパートの屋上にいつものように一番乗りした。積もった雪に自分の足跡がついた。
「あれ?」 一瞬、昨日男の子がいた辺りに人がいると思いぎくりとした。しかし、よく見るとそれは雪だるまであった。誰が作ったのだろう、と雅宏は訝しがった。屋上には雅宏の足跡以外、誰の足跡もついていない……。

(1998/12/11/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:997)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】電話は鳴らない

「そうなの。あの子ったら、ケータイを一日中離さないのよ。それで一日中話をしてるの。ええ、そう、一日中……。
 あの子、最近は学校にも行ってないし。ええ、行ってないのよ。もう一ヶ月近くになるわ。このままじゃ、進級だって危なくなるんじゃないかしら。本当、そうなったら困るわ……。
 そう、部屋にこもりっぱなしなの。朝から晩までずっと閉じこもっているのよ。昼間から部屋にカーテンを閉めて。食事の時でさえ部屋から出てこないの。仕方ないから部屋に持っていってるんだけど。え? 甘いって? 仕方ないじゃない。部屋から出るっていったら、トイレに行く時くらいしかないのよ。その時だってケータイ持って、しゃべりながら用を足してるみたいなの……。
 静かになる時っていったら、眠ってる時だけ。でも、その睡眠時間だって短いみたいなの。ええ、あんまり眠ってないみたいだわ。一日三、四時間じゃないかしら。このままじゃ、きっと体を壊してしまうに違いないわ……。
 病院? ええ、勿論連れて行こうとしたわ。でもあの子ったら、すんごく抵抗して、暴れて、あたしにはとても無理だわ。連れて行くの。一度お医者さんの方に来てもらったんだけど、あの子、部屋から絶対出てこなくて。お医者さんもどうしようもなくて……。
 え、あの子、誰と話してるのかって? あら、言わなかったかしら。あの子のケータイ、もう契約止めたの。解約したのよ。今から二ヶ月も前に。そうよ、今はどこにも通じないのよ。なのにあの子ったら、一日中……」
というように、彼女は一日中、つながらない電話で話をしている……。

(1998/12/04/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:665)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】ワタシハカラダ

 三十八階から見える空には雲一つ浮かんでいなかった。
 耕一は今まで着ていたメガロジック社製安息用ボディー『パジャマーン』からアーバイン社製のボディー『マルチ・スポーツⅢ』に着替えた。
 個人用ボディーで世界一のシェアを誇るアーバイン社製の『マルチ・スポーツⅢ』を着れば、昨年開かれた北京オリンピックの全金メダリストと同等の運動能力を有する事が出来る。つまり張大成と同じく四二、一九五キロメートルの距離を二時間三分三十秒で走り、野球のスコット・トンプソン同様一六六キロの豪速球。柔道の山本卓也の一本背負いも自分のものだし、ビクトル・シリツォフの怪力で四百八十キロのバーベルを持ち上げる事だって可能である。そして大事な点は、それらは決して他人の体験の追想ではなく、あくまで自分自身の体験として出来るという事にある。
 耕一は超高層マンション前の公園でウォーミングアップを済ませると、会社までの一二キロを軽やかに走り始めた。日差しは柔らかで、走る事が楽しかった。
 現在、人々の多くはTPOに応じて服装だけではなく、体そのものを使い分けて生活している。人は対人関係において様々な役割を担っているから、それに応じた能力が、ルックスが、あるいは醸し出す雰囲気やオーラまでもが必要とされる。だがすべての事柄が際限なく細分化されていく世界で、すべての役割をそつなくこなす事は人間には不可能だった。その不可能を可能にしたのが肉体と精神の分離技術マインドトランスファーと、分離された精神を受け入れる肉体、第三世代人型ロボット群、通称ボディーだった。ボディーは当初、行き過ぎたヴァーチャル・リアリティーへの反動として生まれたが、現在は人々にとってなくてはならないものになっていた。ボディー産業は今世紀の主要産業の一つになり、人は洋服を着替えるように体を着替える。
 一日の終わり、耕一は『パジャマーン』に着替えてベッドに入った。
 多くの人は、眠るときは自分の体に、生まれたときの親からもらった体に着替える事が多い。眠るときぐらいは自分の体で夢を見たいと思うのか、あるいは、眠っているときだけでも本当の自分でいたいと思うのだろうか。しかし、耕一にはそれが出来なかった。耕一にとってそれは叶わぬ夢だった。
 耕一はベッドの中で、もう随分と前に盗まれてしまった自分の体の事を思った。
 オレハイマ、イイユメヲミテイルダロウカ……。

(1998/11/27/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:999)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】「おはよう」のひとことで世界が始まる

 吐く息が白くなり始めた朝だった。鹿山中学校二年二組の生徒達は始業時間迄大分間があるという事もあり、半分ほどが登校して来ているだけであった。まだ教室にあまり喧騒がないのは人数が少ないという事だけではなく、ひたすら騒ぐ事だけが取り柄のような生徒達の登校時間がまだしばらく先、遅刻寸前、あるいは遅刻、というせいでもある。
 葉山一樹は中央の列の前から三番目の自席につき、カバンの中身を取り出して机の中にしまった。それから友達と話をするでもなく、教室の前の入り口に、何気ない風を装いながらも抜け目なく目をやった。島本奈美の登校を待っているのである。
 一樹の一日は奈美を一目見てから始まる。一樹は奈美が登校して来る迄、母親に起こされて布団から抜け出しても、眠い目をこすりながら朝食をとっても、ほんの二十秒だけおざなりに歯を磨いても、「いってらっしゃい」と母親に見送られて家を出ても、奈美の事が気になりだして以来、一日が始まったという気がしなかった。奈美を見る迄は一樹にとっての世界は止まったままなのである。
 それは秋の運動会がきっかけだった。クラス対抗のリレーにアンカーとして出場した奈美は、バトンをうけた時点で四位だったのが三人をごぼう抜きしトップに躍り出、そのままゴールした。それ迄は奈美と話をした事さえなかったが(その状況は残念ながら今でも変わりがないが)、その勇姿が目に焼き付いて離れなくなってしまった。あまり目立つ存在とはいえなかった奈美が、突然眩しげな光彩を放し出したように感じられた……。
 もう来てもいい頃だと一樹が思った時、不意に後ろから、
「おはよう」という奈美の声がした。
 その多少はにかみを含んだような声に一樹は振り返った。奈美が微笑んでいる。奈美はいつものように一樹が見張る前からではなく、後ろから入って来ていたのだった。
「お、おは……」
 突然の事に一樹は驚き、それでも言葉を返そうとしたが口ごもってしまった。奈美は別段一樹の言葉を待つでもなく、自然な足取りで自席へと歩いていく。
 一樹の胸は早鐘を打っていた。頬が赤らんでいた。奈美を見ると何事もなかったように友達とおしゃべりを始めている。その姿を見ながら一樹は「おはよう」という言葉を、まるでそれが重い扉を開ける呪文のように、幾度も幾度も心の中で繰り返した。すると一樹は、世界が始まったという気が心底からしてきたのだった。

(1998/11/20/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:995)



〈1000文字小説・目次〉


【1000文字小説】名前

「私はあなたの娘です」 秋ももうすぐ終わり、そろそろ初雪の便りが聞かれる季節だった。僕は散歩がてら近くの書店へ行くと妻に言い置いてマンションを出ると、それを待っていたように現れた少女は快活な声でそう言ったのだった。
「何だって?」誰だ? この少女は。僕と妻との間にはまだ子共がなかったし、ましてやこんなに大きい娘など、僕には思い当たる節などなかった。少女はまだ十代前半に見えるが、僕は現在二十七であり、少女が十五だとしても僕が十二の時分の子になる……。
「私はあなたの娘です」少女は僕の顔を確かめるようにじっと見詰めながら、同じ言葉を繰り返した。
 僕を騙し、からかって楽しむような子にも見えなかった。少女の母が、少女に僕が父であるとでっち上げを教えているのかもしれない。なぜそんなことをするのかは不明だが、そうだとしたら少女が可哀相でもある。
 けれど少女の真摯な瞳を見ていると、少女の言葉が真実であるような気がしてくる。少女がどことなく僕に似ている感じがするからだろうか……。
 落ち葉が舞う公園のベンチに並んで座りながら、僕は少女に年齢を尋ねると十四だと答える。
「十四? すると君は僕が十三の時の子か。僕にはそんな覚えはないよ」
「そうじゃないんだけどな」少女はちょっと困ったような顔をして答えた。
「君の名前は?」
「妙子です」
 その名を聞いて僕ははっとした。
「いい名前でしょ。お父さんがつけてくれたんですよ」
「……お父さんっていうと、僕がかい?」
「そうです。妙子ってどういう意味か知ってます? 美しいとか、優れてるって意味があるんですよ。私、お父さんには会った事がなかったから、自分の名前の事を考えて、お父さんと会話した気になってたんです」
「僕と会話?」
「ええ。どうして妙子って名前を付けたのかとか、どんな子になってほしくてつけたのかとか、色々と考えて」
「ふうん」
 なんとなく少女が僕の子であるような、そんな気がしてくるのが不思議だった。十三の時の子であるはずはないのだが、理屈ではなく、まるで僕の血が真実を訴えかけてくるような……。
 ふとSFめいた考えが思い浮かんだ。少女はタイムマシンにのって僕に会いにやってきた、僕の未来の子……。馬鹿げた考えだった。しかし、本当だったら?
 妙子の名前は未来の僕がつけたのだろうか。僕の、結ばれなかった一番大切な人の名を……。
 僕も妙子の父と会話を始める。

(1998/11/13/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:996)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】私は中央分離帯にいる

 私は今、中央分離帯にいる。
 彼此三十分になる。別段この場所が気に入っているとか排気ガスが好きだとかいう訳ではない。唯単に向こう側に渡れないだけの話である。
 自宅マンションへ帰着するにはこの上り下り共二車線の国道を渡り、向こう側に行かねばならない。ところがその為にはここから五百メートルほど歩いた所の交差点を渡りそこで反転、再び五百メートルほど歩いて戻ってこなければならぬ。バス停が中途半端な場所に位置するせいであるが、そんな不都合を我慢出来ず、しばしば横断歩道のない道を横断するのである。
 今日も上り車線がすいたのを見てまずこの中央分離帯まで辿り着き、下り車線が途切れるのを待った。が、今は下り車線が一番混雑し、殺伐たる雰囲気を産む時間。中々チャンスが巡ってこない。だが途切れないなどという事態はないはずであり、私はひたすらチャンスを待った。ええ、待ったんです。待ったんですとも。
 けれども今日に限って車の流れが途切れない。やっと途切れたと思って渡ろうとすると、脇から車やバイクが猛然と走り出てきたりする有り様。こんなことがあっていいのか。でもあるから私の人生どぶねずみ色。ああ、どぶねずみ色。
 もし地道に交差点まで歩いていたら……、いや、勝負にもし〜は禁物である。今更中央分離帯をこのまま信号まで歩いていくのも業腹である。意地である。男の意地を見せるでやんす。
 ドライバーが私を発見しても誰一人速度を落とす事はなく、間抜けな奴というように一瞥し走り去る。一歩でも車線に足を踏み出そうものなら鬼のようなクラクション。無論私が車に轢かれでもしたら激流のごときの車の流れは即停まるであろう。そしてこの光景を目撃した人々はこれを千載一遇のチャンスとばかり横断を開始、まんまと向こう側へ到達する輩が出るかもしれぬ。私は車の流れを断ち切った先駆者として新聞に名前位は載るかもしれないが、それはいかにも割に合わぬ。
 その時向こう側から一匹の猫。飛び出すな車は急に止まれない、などという事を私は叫ぶ間もなく、あわれ猫は轢かれてしまった。合掌。けれど猫には悪いが好機到来である。だが猫を轢いた車はちょいと速度を落としただけで再び加速、逃走。後続車は轢かれた猫の車線を避けて走る。止まらずに。犬死にの猫。
 猫踏んじゃった、猫踏んじゃった、猫踏んづけちゃったら平面猫。潰れた猫の目。オマエモコウナル、と言っている。

(1998/11/06/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:999)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】私は転がる坂道を

 ついてない日というのがある。妻が蒸発し帰宅したら部屋の灯し火がついてない、というついてないではなくて、え? 今日はカレー? 昼飯もカレーだったんだよなという運が悪いとかの意味でのついてないである。
 いつも私は妻の助けを借りて起床するのを潔しとせず、購入から十年になる目覚しの最大音量によって目を覚ますのが常であった。しかし本日電池が切れた目覚しは所定の時間に鳴る事はなく、私は妻のソプラノによって覚醒することに相成ったのである。それで清しい朝とはならなかった。いや、私は愛妻を厭い、嫌っているわけではない。普段通りに事が運ばなかった事が不快だったのだ。
 果然それがけちのつきはじめ、月末なのにつきはじめ。地下鉄の自動改札口では定期の期限切れに気づかず、意地悪なサウンドが流れ通せん坊され、そこで財布の空に気づきフリダシニモドル。電車では珍しく座れたら目の前の男が突然嘔吐し吐瀉物が降り注ぎ、端整な顔立ちの私が痴漢に間違えられ、無情にもスリにあう。
 会社についてもついてない。勿論これは到着したのに着いてない、という意味不明の意味ではなくて、え? 今日はトンカツ? 昼飯もトンカツだったんだよなという運が悪いとかの意味でのついてないである。
 昨日ようやくまとまった商談の相手会社が倒産、不倫相手の女子社員が笑顔で妊娠したと告げ、課長の口臭はきつく、昼飯にカレーを頼めばトンカツが来、靴の紐を踏んで転んでズボンに穴。会社を出れば営業車がガス欠、パンク、果ては爆発、炎上。行く先々では担当者が皆席を外しており、車を修理に出して帰ると土砂降りの雨に遭遇。
 今まで私にはいい事もあれば悪い事もあった。これだけ厄災が続けば吉事の連続は間近であろう。人間万事塞翁が馬である。いいことわざである。コインの裏ばかりが常しえに続くわけはない。
 しかしまこと先人達は偉大であった。泣き面に蜂、弱り目に祟り目、ということわざもまた今まで生き長らえてきたのにはそれなりの所以があったのである。
 居眠り運転の大型トレーラーが私を跳ね飛ばし、私は数秒で我が三十年の人生をパノラマ視、遂に死に至ったのである。 しかし凶事は止まらない。私に対し天国の門は開かなかったのである。なにも私が悪辣、奸佞というわけではない。丁度私の前の人間で天国は定員一杯などと天使は宣うのであった。理不尽な戯言。ああ、地獄に落ちた気分。ツイテナイ。

(1998/10/30/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:997)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】雪迎え

 ベランダにいたティムがリビングルームに入ってきて、真理子の足首に体をこすり付けた後、キッチンに行って蛇口の先に溜まった水を飲んだ。真理子はティムの様子をぼんやりと目で追ったが、やがて読みかけの文庫本に栞を挟むと、外の風景に目を移した。ピクニックにでも出掛けましょうと誘っているかのような青空が広がっている。真理子はティムと下界の見張り番を交代するようかのようにベランダへと出、外気を思い切り吸い込んだ。
 風のない、穏やかな秋の日曜の午後だった。真理子は手すりに手をかけ、三十階からの眺望を楽しんだ。賑わう街の自動車の列。郊外の田圃。遠くには色づき始めた山が見える……。
 敬一が気に入ったのは高い天井や大型のクローゼットや近くにあるビデオレンタル店やコンビニエンスストアーではなく、市内が一望出来る三十階からのこの眺めだった。それまで住んでいた賃貸マンションの、眼前の零時まで消えないパチンコ屋の電飾看板にはうんざりとしていたので、この景色を見た敬一はひどく感激した面持ちで、勢い込んで二十年のローンで購入を決めたのだった。
 だが、この景色を二人で見ることはもうなかった。真理子がそう望んでも、それは叶わぬ夢だった。今やこの景色は真理子だけのものになってしまった。いや、真理子と、一匹の牡猫のものに。
 もう二度と会わないならば、せめてこのマンションから飛び降りてくれればよかったのに。自分の好きなこの景色を眺めながら。そんなことを真理子は思う。だが、敬一は今頃早紀と一緒に新しい景色を眺めているのだろう。慎ましそうな顔とは裏腹に、我が儘で、不身持ちで、平気で友達の夫を奪い取るような女と。なぜ敬一にはその本性がわからないのか。正体がわかれば、敬一は自分の元へ戻ってきてくれるかもしれない……。
 景色を見ている真理子の頬にふとあたったものがあった。蜘蛛の糸だった。真理子は首を上げた。青空から透き通った細い糸ががふわりふわりと落ちてくる。
 これから寒くなるこの季節、草の葉に登った蜘蛛の子が糸を出し、風に乗って空を移動する。蜘蛛の子が雲の子になって空を駆けるのだった。真理子は掌にそっと受け止める。だが、それはいつのまにか消え去ってしまう。彼女のはかない願いのように。
 これから、冬が来る。寒くてつらくてやるせない、一人と一匹の冬。ティムはどこで丸くなる。真理子の部屋に炬燵はなかった。

(1998/10/23/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:995)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】私は植物図鑑を買いに走ろうと思う

 十年間働いていた会社が倒産し、家でごろごろすることになった私に三歳の娘が纏わりついてくる。私が珍しいのである。それまでの私といえば娘が起きる前に家を出、娘が眠った後に帰宅し、休日はといえばアルバイトで、娘が起きる前に家を出、娘が眠った後に帰宅していたので、起きている間のコミニュケーションはほとんどなかったからである。私は娘を連れて散歩に出る。
 上天気の秋の道。娘は道端や人様の小庭に生息している草花をぶちぶちと千切っては私の元に持ってきて、無邪気な顔をして「これなあに?」と名を尋ねてくる。「知らぬ」と答えれば当然娘は子供特有の無遠慮さで軽蔑の眼差しを私に向け、父親の権威は地に落ちるであろうことは容易に推察される。であるから、たんぽぽとねこじゃらしくらいしか知らない私は、その形状、色、匂い、連想されるもの等から適当に命名しそれを答える。
「センコウハナビミタイダソウ」
「つぶつぶオレンジグサ」
「モバイルグリーン」
「バイオキイロモドキ」
 娘は口の中でぶつぶつ繰り返し、懸命に覚えようとしている。健気なものである。しかし、どうせ娘は一晩眠れば私が教えた草の名などすっかり忘れてしまうに違いないのである。なんていっても私の娘であるから。私には三歳の頃の記憶なんてまったくない。だから私は平気で出鱈目を言えるのである。父親の尊厳を失わず、逆にへーお父さんって何でも知ってるんだという賞賛すら勝ち取ることが出来るのである。もうこれは立派な完全犯罪である。
 だが、なかなか飽きずに次から次へと草花を持ってくる娘に対し、段々面倒になってきた私は尊厳を勝ち取るという意気込みが減退し、それに比して
「ファイティングバーミリオン」
「ラッタッタ三世」
「ヒー」
「ケ」
と答弁する草の名が徐々に短く、且ついい加減になってしまったことは仕方のないことであろう。三歳の娘の好奇心と三十三歳の父親の無責任。
 翌日。同時刻。娘が散歩に行こうとせがみ、秋の空の下出発する。娘は昨日同様草花を千切っては私の元に持ってきて、「バイオキイロモドキ」とか「モバイルグリーン」とか「ヒー」とか言っている。自慢げな娘の笑顔に反し私は顔面蒼白。胸が早鐘を打つ。妻の遺伝子の成果であろうか。昨日言ったような覚えのある名前をすらすらと言う娘は妻の子でもあったのだ。
 失業保険が下りたら植物図鑑を買いに走ろう。秋風立つ前に。給付まであと五日。

(1998/10/16/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:997)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】私は仕方なく正直に

 妻の大事にしていたセキセイインコのぴーちゃんを踏んづけて死なせてしまった。妻の留守中ぴーちゃんの世話を頼まれた私は、ぴーちゃんを鳥かごから出して部屋の中で遊ばせてやり、その間私は鳥かごの下に溜まった糞を洗い流してやっていた。無事洗い終え、「ぴーちゃん、おうちが奇麗になったよ」と猫なで声で私が部屋に戻るとぴーちゃんの姿が見えない。おや、いずこと捜しているうちにいつのまにか私の足の下にいたのだった。
 私はぴーちゃんが鳥であるという事実から高いところにいるはずだと思いこんで、箪笥の上とか食器棚の上とかテレビの上とかテーブルの上とか自分の肩の上とかを捜していたのだが、あろうことかぴーちゃんは鳥のくせに私の足元をのそのそと歩き回っていたのである。この場合ぴーちゃんにも過失があったと思うがもはや死人に口なし。生きていてもしゃべれないが。ぴーちゃんの下の世話までするいい奴なのに、妻は激昂、私を極悪人と決めつけ、実家に帰ってしまうに違いない。その最悪の事態だけは何としても回避せねばならぬ。
 方策を立てる。ぴーちゃんが逃げてしまったということにしたらどうであろうか。踏んづけた、と言うよりは夢があるし、死亡と行方不明とでは雲泥の差。そうだ。ぴーちゃんは飛び去ったのだ。大空へ、インコだてらに自由と平等と博愛を求めて。私は窓から外を見る。鰮雲が広がる秋の虚空。
 ぴーちゃん探しに行った振りをしてパチンコ店で時間を潰していた私が帰宅すると妻が戻っていて、
「……あなた、ぴーちゃん、死んじゃったのね」といきなり核心を突いてきた。
「い、いや。逃げ出してしまってね。私は今まで捜していたんだよ。二万円負けたが。だけど、どこにもいなかった」
「うそ。庭にぴーちゃんのお墓があったわ」
「うっ」心根の優しい私はぴーちゃんの亡骸を庭に埋葬し線香と花を供え墓を作った。だがそれは猫の額ほどの我が屋の庭ではあまりにも目立ちすぎたのである。空の鳥かご+突然現出した墓=ぴーちゃんの死、という結論を導き出した目の潤む愛妻。
 窮鼠の私は真実を告白する。正直者の秋。私はおののきながら、「じ、実家に帰ったりはしないだろうね」
 妻は怪訝な顔で「……実家? 帰らないわよ」と言う。
 それを聞いて私はほっと安堵する。ならばよし。妻よ、我に罵詈雑言を浴びせよ。甘んじて受けよう。それらはすべてぴーちゃんへの手向けの言葉。小心者の秋。

(1998/10/16/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:996)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】彼の使命

 ハヤタは温泉の湯に浸り、気持ち良さそうに目を瞑っていた。そこへハヤタと一緒にこの温泉に来ているヘルパーのオオタカが飛び込んできた。怪獣が出たという。ハヤタの目がぎろりと光った。
 ハヤタは素早く湯船からあがり、そして裸のまま外へ出て行こうとしたので、オオタカは慌ててハヤタを呼び止めた。オオタカに呼び止められ、ようやく自分は裸だと言う事に気づいたが、ハヤタはなんだ下らない事で呼び止めるな、という目でオオタカを睨んだ。その眼光にたじろいだオオタカは、「そんなにあせらなくたって大丈夫なんですから」 言ってからオオタカは自分の失言に気づいたが、ハヤタには聞こえない様子だったのでほっとしたのだった。
「ここからはあんた一人で逃げてくれ、わしゃちょっと用を思い出した」こんな時に用も何もあったものじゃないのだが、そう言うハヤタを止めもせずオオタカは、「はあ、そうですか。では気をつけて」とあっさり言って二人は別れた。
 ハヤタはベータカプセルを取り出し、その場でウルトラマンへ変身した。四十メートルの巨人の出現により、ホテルはあっという間に崩壊した。
 ウルトラマンは怪獣に飛びかかった。怪獣に馬乗りになりパンチを叩き込む。ぐったりしてきた怪獣はスペシウム光線を受けると苦しそうな呻き声をあげて、どう、という轟音とともに倒れた。それを見たウルトラマンは満足そうに「シュワッチ」と叫んでから大空へ飛び去っていった。
「このまま、本当に飛び去ってくれたらいいのになあ」とオオタカが言った。
「まあ、そう言うなよ。彼は今まで地球を守ってくれたんだ。我々のせめてもの恩返しさ」とは科特隊隊長サコミズの言葉である。
 今世紀、地球防衛は彼の、ウルトラマンの手を全く必要としなかった。陸海空宇宙すべてに張りめぐらされた防衛網により、怪獣達あるいは地球を狙う宇宙人達は彼の出番を待たず、瞬く間に撃退された。そんな折ぼけ始めたハヤタは一心同体のウルトラマンにも影響を及ぼした。彼は今でも地球人は自分を必要としてくれていると信じ込んでいた。自分の使命は地球を守る事だ。自分がいなければ地球はおしまいだ……。
 そんな彼の為に地球人は舞台を用意したのだった。今までの活躍に対して感謝の意を込めた、彼だけの舞台を……。「おおい、もういいぞ。戻れ」隊長が言うと、怪獣は隊長の掌に小さなカプセルとなって戻ってきた。次の出番に備える為。

(1998/10/09/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:997)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】シルバーシート

 ゆっくりとホームに滑り込んで来た電車に乗り込んだ松田時夫は、車内をぐるりと見渡した。そして席がすべて埋まっているのを見ると、この時間はもう少し空いているはずなんだがな、と思いながら舌打ちをした。
 時夫の通っている大学があるS市まではこれから丁度一時間かかる。いつもなら別段立って行く事も苦にしないのだが、今日は徹夜でレポートを作成していた為、腰掛けて眠っていきたかったのだ。
 時夫は隣の車両に移り、そこでようやく空席を見つける事が出来た。が、そこがシルバーシートであった為、時夫は座ることを一瞬躊躇った。時夫は普段、立っている人間がいなくても、若くて健康な自分がシルバーシートに座る事を遠慮していた。時夫が遠慮したとしても、他の客ですぐに埋まってしまうのだが。
 しかしこのまま立っていられない程に眠かった時夫は、決意したようにそこに腰を下ろした。するとそれを待ち構えていたかのように、たちまち眠りへと引きずり込まれた……。
 時夫は大学を六年かかって卒業し、食品会社に営業職で入社。
 三回ほど転勤した後に三十歳で結婚。妻は四つ年下で、同じ会社で経理の仕事をしていた。二年後に元気な女の子が生まれた。
 その後五回の転勤があったが、単身赴任は一度もしなかった。
 東京本社の営業部長になったところで定年となり退社。
 娘は短大を卒業した後一年して嫁に行き、二年後にはかわいらしい女の子、時夫にとって初孫も出来た。
 時夫は現在妻との二人暮らし。悠々自適の身である……
 どこかの駅に止まったらしいその振動で時夫は目を覚ました。腕時計に目をやると、まだほんの十分程度しかたっていなかった。その間に自分の生涯の夢を見ていたらしい。まるで邯鄲の夢だな、と時夫は思った。
 ふと気がつくと時夫から少し離れたところに女性が一人吊革につかまっている。妊婦だった。
 時夫の周りの人間はみな新聞や本を読んでいたり、居眠りをしていて誰も席を譲ろうとはしない。皆時夫と同じような学生や若いサラリーマンばかりなのに。
 そこで時夫は席を譲ろうとして立ちあがった。だが徹夜の疲れだろうか、体が妙に重かった。
「どうぞ座って下さい」と時夫はその女性に声を掛けたのだが、自分の声が妙にしわがれているのに驚いた。
 時夫を見たその女性は慌てて言った。
「あら、いいんですよ、私は次で降りますから。座ってて下さいよ。おじいさん」

(1998/10/02/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:990)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】親指

「なあ、おい」
「はい?」黒塗りのベンツを運転している井上が、ちらと助手席の相田を見て応じた。
「お前さあ、迷信とか信じる方か」
「迷信ですか、いきなりなんですか。犬が西向きゃ尾は東、とかですか」
「なんかちょっと違うな。嘘をつくと閻魔大王に舌を抜かれるとか、食べてすぐ寝ると牛になるとか、そういう類いのやつだよ」
「夜口笛を吹くと蛇がくるとか、ですか」
「そうそう」
「俺はそんなの信じちゃいないですけど」
「霊柩車を見たら親指を隠すってのは知っているか?」
「そういえば前の方に霊柩車が見えますね。確か、親が早死にしないようにでしょう? あんなの、ほんとに迷信ですよ。信じてる人なんかいるのかなあ」と言った後、しまった、という表情になって「相田さんは信じているんですか」と恐る恐る言う。
「ああ、信じているとも」
「す、すいません。……でも、意外ですねえ」
「そうか? まあ、きけ。俺がまだ小学生だった頃だ」
 そう言われて井上は現在の相田がランドセルを背負っている姿を想像しておかしくなった。
「俺はな、霊柩車を見たら親指を隠すなんて事はばからしくてな、霊柩車が走っているのを見ても親指なんか隠さなかった」
 井上は、俺だってそうですよ、という顔で頷いている。
「でもな、友達はみんな隠すんだよ。そして俺の親は早く死んじゃうぞっていうんだ。だけど、逆に俺はそういう奴等をばかにしていたよ。うちの親はいつもぴんぴんしてるぞってね」
「いますよね、そういう子。いきがっている子」井上は妙に嬉しそうに言う。
「そんなある日、親父が突然死んじまった」
「……御愁傷様です」
「交通事故だったんだがな。居眠り運転のトラックに跳ねられておしまいさ」
「あの、もしかして」
「前の日にな、霊柩車を見かけて、友達はみんな親指を隠したのに、俺だけはいつものように隠さなかった。反対に親指を突き出したりした」
「ああ、やっぱり」
「俺はそれ以来霊柩車を見ると必ず親指を隠すようになったよ」
「そうだったんですか。……でも、相田さん、小指だったらずっと隠れたままですよね」
「うるせえ、ばか」
 そう相田が言ったとき、前を走っていた霊柩車が左折をし見えなくなり、相田はようやく親指を出したのだった。
「でも、おふくろさんには長生きして欲しいですよね」と井上がきくと、
「いや、三年前に死んじまったよ」相田は何気ない口調でそう言ったが、表情はどこか寂しそうに見えた。

(1998/09/25/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:996)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】僕が仮面ライダーになった理由

「君だね。特技に『変身可能』と書いていたのは」役員の一人が僕の顔と履歴書を交互に見ながら聞いてきた。
「はい、そうです」僕ははきはきと爽やかな好青年を演じながらも自信を持って答えた。
 この就職難の時代に誰も知らないような地方の三流大学の学生の僕が、業界最大手A社の第五次選考まで残ったのは、友人達から見れば信じられない奇跡という事になる。だがそれは奇跡でも何でもない。僕は僕なりの努力というものをしているのだ。僕は他の学生達との違いを打ち出す為、ショッカーに頼んで改造手術を受け、仮面ライダーへと変身出来るようになったのだ。
「変身!」僕は大声で叫んで変身ポーズをとり仮面ライダーへと変身し自慢の勇姿を披露すると、役員連中からどよめきが起こった。
「改造された事により僕は朝から晩まで一切の休みなく働く事が可能になりました。過労死によって会社の責任が問われることなどないのです」ここが勝負だ。僕の未来が決まる。思いっきりアピールをする。十分な手応えを感じながら面接は進む。
「他の会社からも内定を貰ったらどうする」最後に、今まで黙っていた社長がバリトンで言った。
「私にはA社しかありません」僕は熱いやかんに触ってしまった手を引っ込めるように即答した。
「そうかね。……では期待してるぞ」
「はい!」もうすでに社員になったような気持ちで僕は返事をした。
 面接が終わり一礼をして部屋を出ようとした僕の背中に、人事部長が声をかけてきた。
「我が社に入る前に運転免許ぐらいは取ってくれよ」
「はい?」
「仮面ライダーが無免許じゃシャレにならんからなあ」役員連中がどっと笑うと、僕もつられて笑ってしまった。
 そう、僕は原付の免許さえ持っていなかったのだ。

(1998/09/18/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:714)



〈1000文字小説・目次〉

【1000文字小説】見ーつけた

 遅いなあ。僕は多少イライラしながら五本目のたばこに火をつけた。幼なじみのアイちゃんとの待ち合わせの喫茶店。今日は十六年ぶりに再会した僕らの三回目のデートだ。
 アイちゃんと再会したのはまったくの偶然で、営業マンの僕がたまたま飛び込みで入った会社の受付がアイちゃんだったのだ。子供の頃からほとんど変わっていないお互いの顔を見て、僕らは十六年ぶりに笑いあった。
 アイちゃんは僕が六歳の頃隣りに住んでいた女の子で、僕の初恋の相手だった。いつも一緒に遊んでいた。他の子なんて存在しないように、僕らはいつも二人だけで遊んでいた。
 そのアイちゃんに関して僕は不思議な思い出がある。ある日、アイちゃんは暗くなりかけた西の空を指差して言った。
「いちばんぼーし、みーつけた」
 アイちゃんの指差した西の空には、一番星がきらきらと輝いていた。次の日もアイちゃんはまた西の空を指差して言った。
「いちばんぼーし、みーつけた」
 きらきらと輝いている一番星。まるでアイちゃんのためにだけ輝いているみたいだった。そのまた次の日、僕はアイちゃんよりも先に一番星を見つけようと西の空に目を向けていた。アイちゃんもそれに気がついて、僕に負けないように空に目をやった。そして南の空を指差して言った。
「いちばんぼーし、みーつけた」
 南の空には一番星が輝いていた。次の日もその次の日も、またその次の日もアイちゃんが先に一番星を見つけた。僕も目を凝らして探すのだが、どうしてもアイちゃんに遅れをとってしまう。悔しいのだが、やはりアイちゃんの方が早く見つけるのだ。
「いちばんぼーし、みーつけた」
 アイちゃんは、東に西に北に南に、いたるところに一番星を見つけた。まるでアイちゃんが指差したところに一番星が出来上がるように。
 今考えるとアイちゃんは星を見つけていたのではなくて、本当に星を作り出していたんじゃないか? 自分が思ったところに星が出来上がる。そう考えないと辻褄が合わない。僕はそう思うのだ。
 五本目のたばこを吸い終わったとき、アイちゃんが入ってくるのが見えた。僕に気がついていない様子で、きょろきょろと店内を見渡している。僕が手を振ろうとしたとき、アイちゃんの方が先に手を振った。
「ユウちゃーん」
 アイちゃんは、昔と変わらない明るい声で僕の名を呼んだ。だけど、アイちゃんは僕の方を見ていなかった。
「ユウちゃん、見ーつけた」

(1998/09/11/勝ち抜き小説合戦応募 文字数:994)



〈1000文字小説・目次〉