【1000文字小説】夕食まで
パートを終えて店を出ると、外の光は少し傾いていた。
六時間ほど冷房の効いた店内にいたせいか、外の空気が肌にまとわりついた。首の後ろに汗が浮かび、制服の袖口が少し重く感じられた。自転車置き場まで歩きながら、私は今日何度「ポイントカードはございますか」と言ったのか考えた。
帰り道の角にある公園では、子どもたちが遊んでいた。水筒がベンチの下に置かれ、砂場には小さな山が残っていた。
家に着くと、玄関には子どもたちの靴が並んでいた。小さいほうの靴が、斜めになっていた。
私は買い物袋を台所に置き、冷蔵庫を開けた。トマト、牛乳、卵。昼間、何度も見た商品だった。トマトを野菜室に入れ、牛乳を奥へ押した。
夕飯の支度を始める。包丁の音。鍋の湯気。洗面所から聞こえる子どもたちの声。夫からは昼過ぎに「少し遅くなる」と連絡が来ていた。
子どもたちがお腹を空かせていたので、先に食べることにした。三人でテーブルにつき、手を合わせる。そのとき、玄関の鍵が回る音がした。子どもたちが顔を上げた。
「ただいま」
夫の声がした。
私は箸を置いて立ち上がった。夫は仕事の鞄を置き、ネクタイをゆるめながら笑った。
「先に食べててよかったのに」
夫が着替えている間に、私は炊飯器からご飯をよそい、味噌汁の鍋を弱火にかけた。湯気が立った。
夫が食べ始めると、子どもたちは学校であったことを話し始めた。
窓の外には、夏の夕方の明るさが残っていた。
食器を洗い終えるころには、外はすっかり暗くなっていた。
茶碗を伏せ、水を止める。居間では、夫と子どもたちの笑い声が重なっていた。エプロンを外すと、背中に残っていた熱がようやく抜けていった。