【1000文字小説】このギャル、マンガの編集者かよ

 昼休みの喧騒の中、俺は広げた大学ノートに集中する。心血を注ぐオリジナルファンタジー『境界のアルケミスト』のネームを切っていた。主人公が邪悪な魔術師と対峙する、最も盛り上がるクライマックスシーンの構成案だ。

俺が集中していると、机に誰かがぶつかった。「あれ、ごめーん?」頭上から降ってきた声の主は、クラスメイトの姫宮るなだった。腰まである派手な金髪は綺麗に巻かれ、透け感のある薄いメイクが、彼女の華やかな存在感を主張している。

「あれー、何書いてんの?」

「いや、別に…」

るなは俺の手をひょいとかわし、半ば強引にノートを引き抜いた。「どれ、見せてー」

「おい、返せよ!勝手に……」

「ふーん、オタクくん、マンガ描いてるんだ」るなはページをパラパラと乱暴にめくりながら、ニヤニヤと笑う。俺の頬が熱くなる。最悪だ。バカにされる。笑いものにされる。

「んー」彼女の声が止まり、ある特定のページで指が止まった。そこは、主人公が魔術師を倒すための「最後の選択」をするシーンの構成案だった。「ここさぁ、この展開、ちょっと弱いっしょ?」

「は?」

るなはノートを俺の方に向け直し、真剣な表情で書き込みを指差した。「主人公が圧倒的な力を持つ魔術師を、肉体を変化させて倒すっていうのはアリだけど、この設定、既視感マジ半端ない。寄生獣の影響受けすぎたでしょう、これ。あの能力の焼き直しじゃん」」

呆然としたが、指摘された内容は、確かにその通りだ。寄生獣は好きなマンガだが、確かに似ている。

「そうだな。でも、なんでそんなに詳しいんだ?」

るなは俺を一瞥し、当然のように何も答えなかった。「無視かよ!?」と俺は心の中で叫ぶ。るなはただ次のページをめくる。「主人公が自分に課す制約のシーンもさ、そのモノローグの長さ、読者置いてけぼりっしょ。もっと行動で示さないと。例えば、魔術師の誘いに乗るフリして、あえて自分の命を危険に晒すとか。読者のカタルシスを意識した方がいいよ、マジで」

むむむ、そうだ、その方がいい。ストーリーテリングの本質を突いている。

「あんた、才能ありそうだから、マジでもっと真剣に描きなよ。この構成案、悪くないし。この寄生獣展開以外」

るなはネーム帳を俺に返し、ニッと笑った。授業のチャイムが鳴り響く。俺は意外な一面を見せたクラスメイトのおかげで、早くネームを練り直したい衝動に駆られた。(文字数:976)


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