七月には入ったばかりで、まだまだ梅雨は明けそうにない。
今日も朝から冷たい雨が降り続けていた。しとしと降るというよりは結構強い雨だ。満開の頭を垂れているあじさいを見ながら、中学一年になる由子はバス停へと向かっていた。
市の中心部にある大型書店へ行くのだが、晴れていれば自転車で行けるのにと思うと、青空が待ち遠しい。
バス停に着くと待っている人の姿はどこにもない。時刻表を見るとバスは五分前に出たばかりだった。バスは雨降りだと遅れる事が多いので、一、二分前に出たばかりかもしれない。
次のバスまでは後十五分。長いなあ、と由子は小さなため息をついた。
色とりどりの傘の花が、由子の後ろに並びはじめた。雨だからといって人がみな家でじっとしているわけではない。
二台ほど回送のバスを見送った後、行き先を記したバスの姿が見えた。腕時計を見るとやはり雨のせいか定刻よりも遅れていた。車内はそれほど混んではいない様子だ。
が、そのバスはバス停に近づいてきても、スピードを落とさないし、ウィンカーも出さず、一向に止まる気配がなかった。そして、並んでいる数人を残したまま、バスはそのまま止まらずに走り去ってしまった。
一体どういう訳?
バスは満員というわけではなかったし。
後ろを振り返ると、並んでいた人達も怪訝そうな顔をしたり、不満そうに文句をつぶやいたりしている。
次のバスが来るまでに、由子の後ろにはさらに人が並んだ。何しろ一回飛ばされたのだから。
ようやく二台目のバスの姿が視界に入ってきた。だがこのバスも止まる気配を一向に見せなかった。
そして、やはりそのまま走り去ってしまったのだった。
どういう事だ。こんなにたくさんの人が並んでいるというのに!
腹立たしさがこみ上げてきた。
怒った口調でどこかへ電話をしている人がいる。バス会社に電話しているのだろうか。こんなところに並んでいられるかというふうにタクシーを拾って行ってしまった人もいた。
三台目のバスがやって来る頃には、さらにバスを待つ人の列は増えていた。
今度もまた同じように走り去るのではないか。そんな疑問が頭に浮かんだ。
思った通り、バスはバス停に近づいても、少しもスピードを落とす気配がなかった。
どうしてなの。止まってよ。
そう思ったとき、誰かが由子の身体を前方へ強く押した。大きくよろけた由子は小さな叫び声を上げ車道へと転がった。
蒼白な顔を上げると、バスが眼前に迫って来る。
バスは止ま
(了)
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