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2013/10/27

【1000文字小説】アパートを借りに行く



悟郎はアパートを借りる為に近所の不動産屋を訪れた。

「アパートを借りたいんだけど…」

「はい、どんな物件をお探しですか」

「うんとねぇ、地下鉄の駅から五分以内で近所に大きなスーパーがあって、バストイレ付き、二部屋あるといいね」

「はい、じゃあその条件で検索してみますね」店員はパソコンを使って物件を検索する。「これなんかいいですよ。条件にピッタリです。山の中の一軒家でとても静かです」

「お前、俺の話まったく聞いてないな」

「家賃は500円です」

「随分安いな。借りないけどね」

「駐車場が20万円です」

「だから借りないけどな」


「これはどうです」

「今度は駅から5分だろうな」

「ていうか駅の中です」

「駅の中?」

「駅のホームの端っこにあります」

「おお、それならすぐ電車に乗れる。って、おい! ホームなんかに住めるかよ」

「今なら103号室が空いてます」

「103って、他にも部屋があるのか。で、借りてるやつがいる」

「ホームレスには絶対なりませんよ」

「うまいこと言ってるわけじゃないからな。違うやつはないのか」


「これなんかどうです」

「今度は大丈夫だろうな」

「駅から5分、バストイレ」

「部屋数は」

「バストイレ」

「いや、だから部屋数はって聞いてんだよ」

「バストイレだけです」

「バストイレだけ? 他の部屋は」

「他の部屋はありません」

「他の部屋はありませんって、バストイレだけでどうやって生活すんだよ」

「他にアパートを借りてもらえれば…」


「面倒くせえ。ちゃんとした物件はないのかよ」

「あ、ありました。ありました。これなんかいかがでしょう」

「ん、今度は大丈夫だろうな」

パソコンの画面にはなぜか龍角散のホームページが映し出されている。

「何これ?」

「5分ときたら龍角散」

「それ、5分じゃなくてゴホンな」


「ああ、いいのがありました、ありました。今度は気に入ってもらえると思います」

「龍角散はどうしたんだよ。…どれどれ、ふぅーん、バストイレ付き、食事まで付いている…ってこれ刑務所じゃないか」

「ピッタリだと思いますけど」

「おい、何で刑務所入んなきゃいけないんだよ。すぐ出て来れないだろ。ちゃんとしたの見せろよ」


「ええと、これはどうですか」

「なんだこれ、人が住んでる部屋じゃないか」

「私の部屋の写真です」

「なんでお前の部屋の写真なんか見せんだよ」

「駅から徒歩5分、二部屋、バストイレ付き。条件ピッタリの部屋には私が住んでます。一緒に住みませんか」(了)

昨日の日本シリーズ第1戦。楽天は巨人に0-2で惜敗。則本投手はいいピッチングでしたが、0点では勝てません。今日は負けなし田中投手でまずは1勝を期待。


〈1000文字小説・目次〉