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2013/12/05

【1000文字小説】お前はジョニー



ミツコは会社帰りにペットショップへ寄った。ネコを飼いたいと思っているのだが、今住んでいるアパートではペットを飼う事は禁止されている。飼えない寂しさをペットショップのネコを眺めて紛らわしていた。

ロシアンブルー、メインクーン、スコティッシュホールド、マンチカン、アビシニアン、アメリカンショートヘアー…。様々なネコがいる。

飼いたいな。何とかならないかしら。

ミツコは店員に思い切って聞いてみた。

「あのう、今アパートに住んでいて、ペットを飼う事が禁止されているんですが、それでも飼えるようなネコって、いませんか」

ミツコとそんなに歳が変わらないように見える店員は弾んだ声で言った。

「いますよ」

「え、本当?」

「見つからないように飼ってても、引っ越す時に痕跡が残っててバレてしまうんですよね。匂いとか柱の傷跡とか。でもこのネコなら何の痕跡も残しませんよ」

店員はミツコがさっき見ていたネコの中の一匹を指差した。ロシアンブルー。

「本物に見えますよね。この子、実はロボットなんです」

「え? ロボット?」

どう見ても本物に見えた。これがロボットだなんて、随分テクノロジーが進んだものだ。抱かせてもらったが本物のネコとしか思えない。

値段は百万円だった。さっき見た値札は十万円だと思ったが、桁がひとつ違っていた。車が一台買えてしまう。

百万円か。

それでもミツコは今度の日曜日に買いに来ようと思いながら店を出た。貯金はちょうど百万円ある。ネコとの生活を考えながらアパートに向かう。

本物そっくりだ。楽しいだろうなあ。名前は以前から決めていた。ジョニーだ。ファンであるジョニー・デップから取った。

ん?

ネコの声が聞こえた。

道ばたに段ボール箱が置いてあり、声はそこからする。

段ボール箱からネコの声。これは、捨てネコではないのか。

このまま通り過ぎようか。箱を開けると困った事になる。ネコをどうにかしなければならなくなる。

ロボットのジョニーを買う事に決めたのだ。生きているネコは飼えない。

…でも、放っておけない。ミャアミャアという鳴き声が飼ってよと訴えているように聞こえる。ミツコは立ち止まった。

段ボール箱を開けた。小さなネコがいる。

ネコと目があう。

この顔を見ればもう仕方ない。百万円は引っ越し費用にしよう。ペット可のマンションを探すのだ。ロボットのネコ、縁がなかったね。残念。

ミツコはネコを抱き上げ顔を見つめた。

「お前は今日からジョニーだよ」

(了)

いつの間にか12月。寒くなってきたわけです。


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