【1000文字小説】ゴッサマー
日曜日の朝、妻は台所で洗った食器を拭いていた。私は食卓でコーヒーを飲みながら、スマートフォンの画面を眺めていた。息子からのメッセージは、仕事が忙しいという短いものだった。娘のほうは、先週送った写真に親指の絵文字を返してきただけだった。
子供たちが家を出てから、日曜日はずいぶん長くなった。以前は午前中のうちに誰かが何かを探し、誰かが出かける時間を気にし、洗面所の扉が何度も開いた。今は時計の秒針が、部屋の奥まで聞こえる。
息子には仕事のことを尋ねようと思い、娘には写真に写っていた店の名前を聞こうと思っていた。どちらも、今でなくてもよかった。画面を閉じると、黒いガラスに自分の顔が映った。
午後、近所の公園まで歩いた。
ベンチに座ると、小さな子供が目の前を走っていった。母親がその後ろを歩きながら、何度も名前を呼んでいた。息子が小さかった頃、私もあんなふうに名前を呼んでいた。運動会の朝、靴ひもを結び直すよう急かしたことを思い出した。あのとき息子は、返事をせずに走っていった。
帰り道、街路樹の枝に白いものが絡んでいるのを見つけた。蜘蛛の糸だった。陽の当たる角度によって、見えたり消えたりした。
立ち止まっていると、通り過ぎた自転車の風で、それはゆっくりほどけた。切れたのか、枝から離れたのか、よくわからなかった。細い糸はしばらく空中にとどまり、それから、どこへ行くともなく流れていった。
家に戻ると、妻は夕食の支度をしていた。
「公園に、小さい子がいてさ」
そこまで言って、私は言葉を止めた。子供が走っていたことも、母親が名前を呼んでいたことも、妻に話すほどのことではないように思えた。
「どうしたの?」
「いや、別に」
妻は包丁を動かし続けた。私はテーブルの上に置かれた新聞を開いた。
夕食のあと、息子からまたメッセージが届いた。来月は帰れそうにないという。私は「わかった」と打ち、少し考えてから「仕事、無理するなよ」と続けた。読み返すと、どちらも父親らしい言葉に見えた。送信した。
窓の外は暗くなっていた。昼間の糸を思い出した。ゴッサマー。以前、どこかで目にした言葉だった。
台所から妻が、明日の天気を尋ねてきた。
私はすぐには答えず、スマートフォンを伏せた。