認知症の母は、毎食事前に薬を飲んでいる。
飲んでいるといっても、薬を飲まなければならないということはもう覚えていないので、私が飲むように言っている。
素直に飲むときは素直に飲む。
「薬だよ」
「はい」と言って何の問題もなく飲む。
素直じゃないときは飲まない。
「えー、いいから、いいから」と言ったり、「飲みたくない」と言ったり、「あんたが飲みなさい」と言ったりする。
飲まないときはちょっと時間を置くと飲むようになることもある。
1分にも満たない間をとってから「薬だよ」と言うとさっきまでの抵抗は嘘のように飲むことがある。
それで飲まない時はさらに間をあける。
飲まないと言い張ると私も飲ませるのを止める。
で、また数分してから言うと大抵は飲む。
薬を飲むにしても、飲み方を忘れてしまっていることもある。
飲み方を覚えているときはスムーズだ。
これまで通りなんの問題もなく飲める。
だが、飲み方を忘れてしまった場合は時間がかかる。
粉末の薬なのだが、一気に口に入れないで少しだけ入れる。
口に何か入ったのを感じて、それでいいと思うのだろうか。
全部入れないで止めてしまう。
それから水で飲み込まず、舌の上で味わって「苦い」とか言う。
実際は苦くはないはずだが、そう感じるのか。
口をあけて私に「ほらほら」と見せる事もある。
水で流し込むように言うが、一回ではなかなか理解できない。
で、飲みきるまで5、6回繰り返す。
こうやって飲めばまだいい方だ。
「あんたが飲め」
こう言われたときは「俺はもう飲んだよ」と言う。
すると「え、そうなの」という感じで渋々飲み始める。
「いやだ」と言って飲まない時も多い。
「じゃあ俺も一緒に飲むから」と言って私が飲むフリをすると渋々と飲み始める。
薬を飲んで一時間半ほどすると、かなり眠くなる様子だ。
眠くなると大人しいので、手がかからなくなる。
それもあって、できるだけ飲ませたい。
まあ薬は関係なく、ご飯を食べた後なので眠くなるだけなのかもしれない。
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